クー
さながら、舞踏のような演武だと。歩の足運びを刻んではくるりゆらりと身を翻す。しなやかに動く様は眺めていて、嗚呼、と息を漏らしてしまう程に美しい。
自分には出来ねぇ芸当だ、なんて、思わず呟いた。
「お前がこのようにして動く様を想像したら、正直、噴き出してしまうよ」
「…、何で聴こえてんだよ…」
「身体と頭は切り離されているから」
恭しく地に爪先を触れさせた後で後方宙返りをして、スカアハは舞踏を終える。跪いた恰好から身を起こし、此方を見遣る事も無く、上げた手の中へ紅い槍を現すと、今度はそれを用いての演武を始めていくもので。不規則に、しかしながら何処か規則的に、空を切る回転の音。初めは腕で、そしてそこから上半身で、紅が鮮やかに踊る。
――垂直に、無回転に上空へ槍が飛んだ。穂先を上にして、そのまま、棒は身を立てたまま落ちてきて。とん、とスカアハの爪先に石突が載る。彼女もそれも数瞬の停止。
そして、また打ち上げた。勿論再び落ちてくるのだが、その紅にクーは眉を顰めた。倒れてきてんじゃねぇか、と、スカアハへ視線を戻す。彼女は舞っていた――本人にしてみれば、待っていたのだ。
少々の斜め角。穂先は正面へ。女は回りながら脚を振り抜いた。石突を、足の甲が叩き打つ。
「………アンタの脚を嫌いになりそうだ」
「誉めてくれているのかな」
「感嘆どころか戦慄したっつの…」
「ふふふ。…幾ら何でも、私にお前程の膂力は無いからね。それを補うための技だ」
何も無い地の先へ消えていった紅。何とも言えないといった顔をしているクーヘ、スカアハが笑った。己の師の脚術と来たら、それだけでやり合っては到底敵わない事だろう。
男へ寄った女は、彼の逞しい腕をそろりとなぞった。筋は硬く、筋を生んで影を作り。時折自分を抱くこれが槍を捌く様は勇ましく、雄々しく、それもまた美しいのだ。スカアハは愛する弟子のこの先の栄誉を想い、微笑う。