イレギュラー



タン、トン、タン――回りながら舞うようにその場で数歩ステップを踏み、ローブの長い裾を美しく踊らせたかと思えば、次の節からは、軽やかな舞踏は撃のための工程へと組み込まれていた。そして武人は魔槍を撃ち放つ。投擲とするには程遠い、射出と言うが相応しいやり方で。回りながら振られた脚、その踵からまるで生み出されたかのようだった。
己の内の魔力が大きく大きく持っていかれたのを感じるが、和実にとっては何の苦も無い。つくづくお誂え向きだったなと、彼女はやけに冷静な頭の片隅で思う。


その1発、初めはただの1本。しかし、飛んでしばらくすると上空で破裂して。音の余波が大気を震わせていた。1本が数百へ分裂する。あれはそう、差し詰め矢の嵐。更に続け様に到達した計3本が同じくして撃は止んだ。何という事だ――あの巨大な海魔、まるで針鼠のようである。指差しして笑ってしまいそうになるのをグッと堪える。
スカアハへ視線を遣れば、演武をとうに終え、悠然と立った状態に戻っていた。





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