ライダー・セイバー・アーチャー
「――この宴、加わっても?」
「…、キャスターか。すまんが今宵は王の宴なるでな、素性こそ知らぬではあるが一介の魔術師は…」
「えぇ、存じています。ですから…今宵は私も、魔術師としてでは無く、1人の王としての出向きなれば」
「…ほぉ?魔術師としてでは無く王として、と。一体何者よ?お主。それが真実なれば無論喜んで共にしたいがのぉ、魔術師であり王である英雄など残念ながら余は知らんでな」
「…マスター、如何なされる」
「うーん…まいっか!どぞどぞ身明かしをっ」
「ふふ、ありがとう。…さて、なれば――諸王、お初にて。我が名はスカアハ、およそ英雄とは言えぬも真に影の国の女王なる者。今1度訊ねよう、この宴に私…それから我がマスターも、加わっても?」
「ふむ、なれば良し!さぁ座れ座れぃ!飲み語らおうぞ!貴様の王の姿も余は是非聞きたい」
「ありがとう、征服王イスカンダル」
「あっざす!!!!っべーマジっべー征服王くそかっけーマジ惚れる」
「ハッハッハ!良い良い!ほれキャスター、酒だ。中々のもんだぞ。小娘も飲め飲め!」
「あーっとそれがこの国の法律であたしの歳じゃまだ飲めないんすよ…お心遣いだけありがたく頂戴しとくっす!」
「何だ、この国にはそんなつまらん法が敷かれておるのか。小僧知っとったか?」
「え、い、いや…でも僕の国でも一定の年齢越さないと酒は飲めない事になってる。一応」
「っはーまことつまらんのぉ」
「…私は、あぁ否、私も。王というものなどは、征服王の語る姿、語る在り様こそ相応しく、またそれこそ王たらしめる事…斯く在るべしと考えますよ、騎士王。…ですが貴女の言う事も、それはそれで、いじらしい想いかと」
「なッ、莫迦にしておられるか…!」
「いいえ、決して。痛ましく、哀れで微笑ましい。それだけの事。貴女の理想もまた、貴女の欲の形でありましょう。そういう意味では彼女もやはり、王たる者と思いませんか?征服王」
「………まぁ、なぁ。欲と言えば欲だわな」
「――してキャスター、貴様のそれはどうなのだ?ライダーの語る事と一言一句違わぬと?」
「いいえ、彼程確固たるでは。ただ、大いに賛同も。…そうですね、加えるとするのであれば…私は、私の統べる地に住まう者達が愛おしい。言うてしまえば我が子も同然なのです。故に、導くのみならず、寄り添ってやりたい。ただただ彼らの先に立つでは無く、求められるのなら…或いは自ら、彼らの傍へ行き、助けとなりたい。これも叶えられる王というのが、私のそれです」
「…フン。悪くは無いが…弱いな、王なる貴様とは。つまらん。雑種は雑種に変わり無いか」
「ふふ、それは勿論、貴方に言わせてしまうのなら致し方も無き事でしょう。私は母でも在りたいのだから」
「…あっ。そっかーじゃイスカンダルさんはまさに父ちゃんっすね!とにかく導く!威信の父…父上っ…!なにゆえあたしは父上の実子では無いのか…!」
「!ハッハ!貴様まっこと愉快だな小娘!キャスター、お主も良きマスターを持ったじゃないか、えぇ?」
「えぇ、本当に。この者は実に面白いですよ」
「だって楽しい方がいいじゃねっすか!ねっ金ピカ様!」
「フハハ、下賤が斯様な呼び名で我を呼ぶか。命知らずだな雑種」
「言うて、愉しんどるでは無いか金ピカよ」
「つまらんとは言っておらん。滑稽なものは嫌いでは無い、暇潰しの興にはなろう」
「暇潰し要員、だと…愉悦…しかし甘んじて暇潰し要員になるぜあたしは…マジ愉悦…」
「ほう、貴様愉悦を知るか」
「金ピカ様のお眼鏡に適うかは分かんねっすけど」