クー
これは他の数名のサーヴァントにも言える事であるが、何もスカアハは、いつ何時においても気を張っている、という訳では無い。むしろどちらかとするなら、常にゆったりと抜いている方である。但しそこに隙が無いというだけの話なのだ。彼女は剛柔の柔そのものであるような気質の持ち主であった。
そんなスカアハが殊気の緩んでいる時というのが、1日の内でも最も気温の高くなる、つまるところ空気の温まった昼下がりで。明るい寝所のベッドに体を丸め、うとうとと居眠りの始まるその頃、彼女の元へと彼はやって来る。
薄く吐息混じりに笑い、男はスカアハの傍らへ腰を下ろした。そうして優しい手付きで、銀糸を無骨な指に絡ませる。静かな部屋にそっと響くのは掠れたアルト。
「…セタンタ」
「ん?」
「くすぐったい」
「そうかよ」
「…セタンタ、」
「おう」
「ともに、ひとねむりしないか」
「…アンタが望むなら」
何処か舌足らずな様子を知る事が出来るのは、恐らく彼と、他に、彼女の夫くらいのものだろう。精悍な男が目を細め、微笑う。隙など無いのに、隙だらけである。柔らかに穏やかに応えて、スカアハへ寄り添い体を横たえた。そうして逞しい腕が女を抱く。力強さと愛しさを伴いながら。