ディルムッド・クー



「クー殿はズルいです。俺も彼女のような師を持ちたかった…」

「あー…」

「はぁ…」

「…。…まぁ、あいつ度量でけぇっつーか容量でけぇっつーか、幾らでも抱え込めちまうような女だしな。いっそお前も委ねてみればいんじゃね?」

「…!…いえ、しかし、その…いいんですか…?」

「いいも何もアレは俺だけのもんじゃねぇしよ。そりゃ女としては貸してやんねぇがな」

「俺は!レン殿を女性として、異性として見た事は無い!」

「お、おう」

「…クー殿が…いいと、仰るなら…俺は、俺は…」





「――ん、大分酒臭くなっているじゃないか」

「お前も飲めよレン」

「いや、遠慮しておくよ。…ディルムッド、どうした?」

「…レン殿」

「うん」

「その…!…お、俺に!」

「…」

「ひざまくら、を、しては、もらえない…だろうか、」

「ブッ」

「クー、汚い。…膝枕、ね。それだけでいいのかな?何なら添い寝でもしてあげるのだけど、」

「いっいえ!そっ添い寝までなどは…!…い、いいのですか?膝、枕…」

「あぁ、いいとも。おいで、ディルムッド」

「は、い!………あ、の、」

「ん?」

「…そ、その、叶うなら…あ、頭を、」

「撫でてあげるさ、勿論」

「…っ」




「さて、ねぇクー。お前は一体この子に何を言ったんだい」

「あー?…いや、こいつも大分苦労してるみてぇだしよ。もっと自分出して甘えるなり何なりしてもいいんじゃねぇのって」

「それで、これという訳だ」

「まそういうこった。…いい感じに酒入ってきたと思ったら輝く貌の美丈夫が拗ねたツラしやがってよぉ」

「うん」

「俺はズルいー自分もお前みてぇな師匠持ちたかったーって、てめぇガキか!っつーくらい頬膨らませてくるもんでな。んな事言われたってどうしろっつーんだったくよぉ。そんでどんどん酒飲むしじとじと見てくるしもうめんどくせぇ女々しい何だこいつ!ってなって、」

「煽ったんだね」

「正解」

「まぁ、私は一向に構わないのだけど。確かにガス抜きも必要だろうとは思っていたしね」

「だろ。…ま、俺の師匠は貸してやっても、俺の女は許可しねぇがって言ったら、」

「私を女として見た事は無いとでも言ったかい」

「お、これまた正解」

「何、以前言われたからね。姉や母のようだと」

「ほーお」

「私と居るのは気が楽だとも言っていた。気苦労の多いこの子の安寧を助けてやれているのなら、私は嬉しいからね」

「…やっぱアンタ、女だな」

「女は月、女は海、と?」

「ん」





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