仮名・夢見野モブ美はついに見た



あわよくば何がしかの力を用いて彼らを救済出来たなら、とか、そりゃ思ってしまうのが夢見るオンナというもんで。だけれどサイバー技能はてんで身に付きやしなかった(そもそもの話取っ掛かりをどうしたらいいのかが分からなかった)し、前世と同様至って平々凡々な家庭に生まれ育った一般ピーポーが警察だの上流階級だのとのコネクションなんぞ作れる訳も無かったし、何なら米花生まれ米花育ちのくせ事件事故とは無縁(勿論それがどれだけ幸せな事かぐらいよくよく解ってはいるのだけれど!)な一方の上に登場人物の誰とも日常が掠らない(今でこそ自ら会いにポアロやモールといった所へ出向してきてしまっているけども)という、つまるところお前は今世も普通に生きて普通に死ぬんだよってそんなオチであった訳だ。ついつい遠い目をしてしまうのも仕方の無い事だろう。
更には更には仮名・夢見野モブ美このわたくし、知っております驚天動地。最推しの心の砦、死ぬはずだった彼らがこの世界においてきちんと生き続けているこの事実。こないだフッツーに来店しちゃってたもんな幼馴染み。あまりに自然に、普通に過ぎて、一周回ってチベスナ顔しちまったもんな…。爆処組は少し前にモールで仲良く二段アイス頬張ってたの見ましたし。伊達さんなんか私のバイトしてるカフェのテラス席で奥さんと仲睦まじくゼクシィ開いてましたし。おすし。いや、いいんだ、いいんだよ。平和が1番だもんな。最推しの笑顔が守られたばかりか箱押しが容易になったんだからこれ以上の良き事なんて世界平和くらいなもんだろ。うんうん平穏安寧ってほんと素晴らしい。うんうん。




(――って現実逃避にもなりますわなぁ)




其処に広がる光景は丸っきりの違和感である。何だってあーた…、ちょ、ドウイウコトナノ?その可愛い女の子達一体誰よ?こんなキャラ原作には居なかったよな?トリプルフェイスよそのでれでれほわほわ顔どうした?はぁ?いや尊いがな?尊いが何事だ?めっっっちゃくちゃ目の保養だし最推しの幸せそうなとこ見れてまぁ確かに全てを許せるような気にもなるけどもな?はーーーーーーーーーーーあむぴかわいい。とうとい。しゅき。かわいい。


事の発端は、そこなカウンター席にお座りしている、中性的な雰囲気ながらもあぁ女の子なんだなと判る空気感も持つ女の子と、その隣、中学生に届くか届かないかぐらいの英国人らしき美少女が2人仲良く手を繋いで此処ポアロに入ってきた時だった。私以外にはあむぴ目当てのJK3人組とJD2人組に、常連なのだろうお婆ちゃん、それからそれから少年探偵団フルメンバーという組み合わせのいつも通りの空間が、良くも悪くも消え去った瞬間だったと言えよう。


陶器人形のような白い肌に、純金の糸を思わせる細くてまっすぐな髪、醒めるような綺麗な青の瞳――しかし儚げかと思ったらその印象をばっさり吹き飛ばす、力強くも悪道そうな笑みを浮かべた、美少女。
日本人としてはかなり白いだろう肌、くすんでいるもきらきらと光を映す銀灰の髪と、冬の曇天に青の絵の具を垂らして混ぜたような青灰の色の目――何処かそう、ロシアンブルーを思い起こさせる、少しばかり中性さを残す女の子。


ザ・お嬢様というクラシカルなブラウス&スカートの西洋美少女と、ロングニットカーディガンにスキニーデニムとショートブーツの女の子。あ、と見惚れてしまったのは事実だ。但しすぐさま目をカッと見開き口をあんぐりと開ける羽目になったけれども。




「いらっしゃい、ま…せ、?!」

「やぁやぁ透くん!ついに来てしまったよ!何せ我慢ならなくって、ねぇ!」

「え、ちょ、うわ…あぁいや、…うん、いらっしゃい」

「そこ、座ってもいいかい?」

「はは、駄目って言ったって聞かないでしょキミは」

「はっは!勿論だとも!」




豆鉄砲食らった鳩のような顔をした安室さんが、だけれどじわじわと頬を緩めて応じていた。快活に笑い声を上げた美少女が率先してカウンター席へ座りに向かい、手を引かれた女の子はと言えば安室さんが椅子を引いて促す。ありがとう、という声は、彼女の見た目とひどくマッチした、高すぎず、不思議とよく通るもの。どう致しましてと微笑んだ安室さんの、何処までも柔らかな声音が、耳にじっくりと残る。




「透くん、ホットカフェラテを1つだ。あとこの半熟ケーキとかいうやつも」

「かしこまりました。漣はまだ後でいい?」

「んーん、私はアップルシナモンパイとホットココアお願いします」

「ん、了解。2人共先に飲み物出すね」

「あぁ」
「はぁい」




いやしかしめっちゃ砕けてる〜〜〜〜〜マジか〜〜〜〜〜尊い〜〜〜〜〜そしてまさかのロシアンブルーちゃんの頭やわり一撫でしてからのカウンター奥へ向かうやーーーーーつ。えっ………?エッ?なに?今何が起きた?はぁ?あむぴのでれほわ顔可愛すぎか?しゅき。あむぴファン達の驚愕が見ずともよく分かる。時よ止まれ!ザ・ワールドッ!ばりに静かなのに空気で判るざわつきっぷりワロス。アッおいおい駄目だよコナンくぅ〜〜〜ん超絶驚きイズムで目を見開くのは痛い程解ります、解りますけれどもいけません、無駄に無謀な好奇心そっとしときなさい。ほんとに。そっとしときなさい。ちょおおおそっ、じっとしときなさいってぇ!!




「ねぇねぇお姉さん達!」

「…うん?何だいボク」

「安室のおにーちゃんとす〜っごく仲いいんだねっ?ねぇどんな関係なのっ?…お姉さんのどっちか、安室さんの恋人、だったりとか?」


それ私も思いましたけど〜〜〜?!!だからってわざわざ突っ込むなよ?!!


「あむろ?…安室。あぁそうだったな、透くんの苗字は安室だったな」

「え〜、あんなに仲いいのに名前憶えてなかったの?それとももしかして、本当は違う名前…とか?」


露骨!!!!はい出ましたコナン君お得意の露骨クエスチョン!!!!


「仲はいいけれど、だからこそ逆に下の名前でばかり呼び合うからねぇ。すっかり忘れてしまっていたよ。漣は憶えてたかい?」

「や、忘れてた…」

「酷いなぁ2人共。僕はちゃんと2人の名前、フルで憶えてるんだけどな」

「ほほう、言ってみたまえよ」

「ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ。キミは僕の可愛い妹分」

「概要付きで大変によろしい。パーフェクトだ」

「そしてキミは、神谷漣。――…僕のただ1人の、大切な女の子」


あっっっっっ…ま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!!!!!!!!???




待っ、て、ガチで?マ?これ夢っすか?安室さんは安室さんなんだけどこれ明らかアレでしょ?「降谷零も安室透も、バーボンですらも同じように想ってる。紛れも無く、偽り無い本心でキミを、想ってる」とかいうアレでしょ?知ってる知ってる。あむぴ目当て勢総員揃いも揃って固まっている。そう私もだ。あらあらまぁまぁってお婆ちゃんホホホって笑っとるがな。見習いたい。いや無理っすわ。歩美ちゃんはきゃあきゃあ頬染めて小さく騒いでる。純粋か。哀ちゃんは普通にびっくりしてる。可愛い。そりゃああの安室さんがとろっとろでろっでろもいいとこな微笑み浮かべてカウンター越しに女の子のほっぺ両手で包んでおでここっつんて………おでこ!!!!!!こっつんて!!!!!!心のシャッター連写ですわ!!!!!!何だよ今日はサービスデーですか!!!!!??れんちゃんもれんちゃんで気持ち良さそうに心地好さそうに目を細めてるの可愛いですはい!!!!!!このアングル一部始終全てを収めるベストポジション賞ノミネートです!!!!!!(?)




「だがなぁ透くん、恐らく、いやきっとだな。漣以外に凡そ興味の無い芥の奴は勿論として、きっと賢王も、静も、時貞でさえもキミの苗字、すぐには言えまいよ」

「…否定出来ない…や、貞兄さんなら実はちゃんと…実はって言ってる時点で駄目か」

「駄目だな」

「駄目だよなぁ」

「透くん。でもさ」

「、ん?」

「苗字は憶えていなくても、皆透くんの事大好きだよ」




ヒナさんも王様もシズさんもトキくんも、皆、透くんの事大好きだよ。って。
最推しの最推しもまた尊し。はっきしわかんだね…。あむぴが吐息混じりに笑い、そっか…嬉しいな、って独りごちたおかげ様で我々、あむぴファンの私もあむぴガチ勢のJK組・JD組も全員が全員、あそこの最高極みしカップル拝み倒して崇め奉り候。


正直この時程コナン君ザマァと思った事は無かった。死んだ魚の目してる場合じゃねーぞ新一ィ!!そーゆーの何つーか知ってるか???藪蛇っつーんだよォ!!!!!!(色んな意味で泣きを見ている)




………待て。さっきエルメロイって、言ってた?てかけんおうだのときさだだの…、えっ?イコール賢王?キャスギル?ときさだは時貞?天草四郎時貞?
え???





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