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生まれ育ったジョウトから、新天地イッシュへと。父親の転勤で引っ越す事になった際に、餞別だと、まだ卵の状態であった俺を彼女は貰ったらしい。当時、未だ7歳。旅立つには些か早すぎると両親に宥められては、顔を顰めて臍を曲げた彼女を慰めるのはいつも俺の役目だった。それ程までに付き合いは長い。


それから数年が経ち、晴れてポケモントレーナーへの旅路を行ける事となった彼女は、道中俺や、母親のメスのヘルガーが産んだのを譲り受けたデルビルを野生のポケモン達と戦わせては鍛え上げ、或いは何か気に入ったものを仲間にし、そうして確実に進んでいった。余りバランスというものに頓着はしないようで、どちらかと言えば偏りも見られ。俺と、デルビルと、それからバオップ。揃いも揃って炎タイプだ。ツタージャも仲間にはなったが、1体では何か心許無いような気もする。
他に、ヨーギラスとダンバル。いずれも野生だった。滅多に見られないだろうに何故イッシュに居たかは各々に理由が有ったが、俺とは全く違う境遇の酷さに閉口するしか無かった。人間不信も1歩手前の状態の彼らを、彼女は優しく抱き締めてあやす。その頃には先駆けて既に最終形態へと進化していた俺は、そんな1人と1匹を見る度に包み込んでやったものだ。尤も、ダンバルの奴は相性的に危うい部分が有ったから、慎重に慎重を重ねたが。


柔らかい笑みを彼らへ向ける彼女が、愛しい、と、それを思っては俺は潔く悟る。いつの間にか、優しいだけの愛情では無くなっていたその事実を。
ポケモンと人間とではどうにもなりはしない違いの上で、それでも俺は、自分を誤魔化す事など出来はしない。キスやハグがじゃれ合いにしか取られないのには些かもどかしく苦しいものが有ったが、だとしても。




旅の途中、無論、彼女を悔しさで泣かせてしまう事も有れば、その分だけ、勝利を手渡せて別の意味の涙を流させてしまう事も有った。不甲斐無さと弱さを噛み締めながら、すまなかったと伝えられる訳も無く、ただただその小さな体を抱き締めて。戦ってくれてありがとうと、泣きつつ笑う彼女の額へ己のそれを重ねては想いを強くした。


もしかすれば、誰か愛する人間を見付けて添い遂げてしまうかもしれない。俺には到底出来ない事だ。しかしそれであっても、きっと彼女は俺達を慈しんでくれるだろう。相手は気に食わないが、幸せだと言うのなら大人しく引き下がるだけだ。


ただそれまでは、精一杯俺に愛させてほしい。他の5匹の先頭に立ち、お前のために栄光を勝ち取り続けよう。喜びを分かち合わせてほしい。初めより終わりまで、共に。




熱い想いが滾る、それが俺の力となる。


変わらぬこの愛を愛しいお前に送り続けよう。


(彼女が技の名を叫ぶ)
(身を籠らせて全てをそこへと注ぎ込み)
(最後の1匹に向け、咆哮と共に)
(噴き上がる太い火柱に奴を呑み込んだ)





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