透坂と須藤、に茶竹



隣の席に座る男子に透坂は1つ声を掛けた。手元の古典のノートへと目を落としながら。




「なぁアキちゃん」

「殺すぞてめぇ」

「1つ貸しでいいからさぁ、訳、写させてっ?」

「キモイ」




語尾のハートを聴き取りピシャリと言って断ち落とした須藤の、淡く明るい髪色とよく似たそれを持つ彼はけらりと笑う。いやマジで、とまた言葉が放たれた。糸目の男子は真顔を保ったまま、嫌だ、とはっきり拒否を示して。そこで初めて透坂は須藤の方を向く。




「いいだろ、お前の得意分野だぞ?ケチいなぁアキちゃんは」

「3度目はねぇぞトオルちゃん」

「アーキちゃん、写さーせて」

「、」

「トオル、取り込み中悪いんだけどな」




青筋と笑みを同時に浮かべた片やが、相手の非常に憎たらしい笑顔に分厚い国語辞典を机の中から取り出したところで、仲裁とも思える第3者の声が割って入った。あれーどうしたのサタさん、なんてコロリと意識の対象をその者へ映した透坂に須藤のこめかみには更に1本血管の筋が現れる。ビキ、という危ない音と共に。




「数3の教科書、貸してくれないか」

「OK.」

「悪いな、ありがとう」

「ぜーんぜん。その代わり古典のさぁ、百人一首の訳とその他諸々のやつ写させてくれる?あ、もしかしてまだやってない?」

「や…ってないな」

「そっか。じゃあほらアキちゃん、やっぱキミがさぁ」

「トオルちゃんは耳が遠いらしいから茶竹耳鼻科連れてけよ」

「えーっと、ははは…須藤、聞いてやってくれないか。俺からも貸し1つって事で、な」

「………チッ…」

「悪いな、ありがとう」

「ありがとアキちゃんI love you!」

「その無駄にいい発音余計腹立つしキメェから止めろ死ね」

「Ahh!This is scary!アキちゃん何でそれでモッテモテなのー」

「は?俺がイケメンで文武両道だからに決まってんだろ」

「仰る通りで」

「お前ら仲いいよなぁ」

「茶竹お前も眼科と精神科行け」

「え、何でだよ。眼科は解るけど精神科…カウンセリングとか必要なのか?」

「いややっぱ何でもねぇわ眼科だけ行っとけ」

「あっはははは!さっすがサタさんつっよ!」

「だからてめぇはさっさと死ね!」

「あはははははは!」





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