アザゼルなるモノ



――氣の王、アザゼル。彼の者は遥か昔、1人の人間の女に恋をした。彼の者は己の世虚無界を捨て、物質界にて女と共に生きる事と決めた。刹那の命に幾度と無く添い続け、廻る輪の中幾度と無く魂を探し出した。笑うアザゼルはとあるように言っている。あの女のためならば同族殺しとて厭わぬ、と。


『魂ってなァ、ひどく、強いもんなのさ。ひどく強くて、えらく輝きやがる。だから悪魔はそれに惹かれちまう。そうしてその魂に取り憑いた悪魔が、その魂の強さと輝きに負けて、その魂が器と共に在った頃の記憶に、感情に――やっぱり、そういうもんってぇのも強い訳だ。そういうのに、負けちまう。なァに、珍しい事じゃあねぇさ、むしろよく有るもんよ。悪魔は人間が思ってる程強い存在じゃあねぇからなぁ』


どの悪魔よりも魂に近い彼の男は笑う。愉しげに、嬉しげに、楽しげに。アザゼルはよく、その強さと輝きを知っていた。己が堕ちてしまう程なのだから。それは。





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