竜から失われた右目
「惣十郎もハツ子も、お前も。訊かねぇんだな、俺のこの右の目の事を」
「…、あぁ、うーん。だってどう考えたって訳有りでしょ?わざわざ突っ込んで人の傷口に触れるとか、ねぇ?ちょっと不躾じゃん?…っていうのが私の主な考えだけど。お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも、そんなのどうでもいいんじゃないのかな。気になるとしても必要な事じゃないでしょ、それは」
「…」
「ていうかお祖父ちゃんなんかは、こっちの伊達政宗と照らし合わせて大体の理由は察してると思うし。なぁに、訊いた方がいい?私に何か、喋っちゃいたい?」
「、」
「いいよーどんと来い。政宗の欲しい言葉欲しい反応をあげられるかは分かんないけどね」
「――………っは、」
「…そっか。つらかったねぇそれは」
「………お前もきっと、コレの有り様を見りゃあ気味悪がるだろうよ」
「んー、かもね。実際見ないと分かんないから否定も肯定も出来ないや」
「Ha,随分正直に言いやがる」
「キミは誤魔化されるのが嫌なんでしょうに」
「…まぁな」
「気味悪いと感じるのは仕方の無い事だよ。重要なのはその後。気味が悪いからとそれを持つ相手まで嫌悪するのか、それは気味悪いものだけどそれとこれとは別の話って割り切るのか。そこが重要で、その分かれ目が、政宗、キミに対するその人の重要度と好意の大きさの違いなんだと思う。要は目の事なんてどうでも良かったらほんとどうでもいいって訳で、さ」
「…。…で、お前は?」
「割とどうでもいいかな」
「そうかよ」
「別にその目のせいでこっちに支障が有る訳でも無し、その上それを補って余り有る政宗の良さでしょ。見た目にしろちょっと気障なのにしろかっこいいし、かと思いきや嬉しそうにする時とかやたら可愛いし、内面に重大な欠点も無いみたいだし」
「可愛いっつーのは止めろ」
「やーだ。政宗は可愛いよ、本当に」
「………」
「剥れないでよーそういうとこも可愛いの1つなんだけど解ってる?」
「うるせぇ!」
「あっはは!」
「Shit…」
「んふふ。政宗」
「…んだよ」
「好きだよ」
「…、」
「いい子いい子」
「………ガキ扱いすんじゃねぇ」
「そんな事言ってる内はガキだよ政宗くーん」