少し経った頃



初めは本当に、どうなる事やらと多少の心配も有ったものだが、これまでとても上手くやっているのでは無かろうか。私が、というよりも、祖父母と彼らが。仲良きかな仲良きかな、なんてはそりゃあ思う。しかし、実の孫以上に祖父母と孫の遣り取りをしているように見えて仕方が無いのは面白いものでもある。それも、年齢的にもかなりどんぴしゃな人間を差し置いて、私よりも歳が上のはずの者達がじじばばっ子みたいになっている事について。


祖父である惣十郎に特に懐いているらしいのは、長曾我部元親さんと毛利元就さん。いわゆる瀬戸内出身のお2人である。元々機械方面は不得手では無かった祖父と、そもそも機械弄りが好きな元親さんが仲良くなるのは何ら不思議は無い。驚きだったのは元就さんだ。あれは結構懐いている、と思う。気遣いを見せるようなのも多い。機械の事で喋りたい元親さんと政治や貿易の話をしたい元就さんとで度々取り合いに発展しているのを見掛ける。祖父は楽しそうにその間で笑っているのだが。


祖母であるハツ子に特に懐いているらしいのは、片倉小十郎さんと猿飛佐助さん。此方へ来たメンバーの中で年長の者と次点の者であるが、私はこの2人をお台所の番人なんて呼んでいる。我ながら秀逸では無かろうか。それはさて措き、小十郎さんは祖母の菜園の管理を手伝う事も多い。まだまだこの辺りでは若い部類、そして極め付けは農業に通じている。そんな男を年寄り達が放っておくだろうか、否、まさか。そういう訳で彼は現在ここら一帯の爺さん婆さん(特に女性陣の勢いと言ったら、そりゃあ確かに農業抜きでもいい男だけども)に引っ張りだこだったり。
また、これはとある日、一仕事終えた小十郎さんを送りついでに少し話し込んでいった、1つ向こうに旦那さんと2人暮らしのヨネさんと祖母の会話とその一連。世間話もそこそこに彼を誉め千切る誉め千切る。しかも本人をしっかりと掴んで逃がさずに、だ。手腕恐るべし。旦那も誉めていたウチに来てほしいくらいだと絶賛のヨネさん、自分の事のように嬉しそうな祖母、そして完全に居た堪れない照れの表情ばかりの小十郎さん。それらを遠目にしていたら、横に佐助さんが来て。




『婆様嬉しそうだねぇ。まるで自分の事みたいに喜んじゃって』

『…佐助さん嫉妬?』

『ま、ちょーっと、ね?』

『ほんとお祖母ちゃんの事好きねー』

『好きだよーハツ子ちゃんすげぇいい人。漣ちゃんが羨ましいよ、会おうと思えばいつでも会いに来れんだろ?羨ましすぎて俺様涙出ちゃう。向こうに帰る時連れてけたら何が何でも守るのにさー』

『………えっ。え?佐助さんどういう意味で好きなのそれ、えっ』

『…あれ待って何かすげぇ誤解してない?してるよな?いや違うからね?!』




癒し的な意味だからとか何とかちょっと焦ってるようなのとか結構更に勘繰っちゃうよ佐助さん。
還暦のお婆ちゃんを癒しだと言うのは分からない事も無いがやはり大分、その、すごい、と思う。それ程までに祖母を慕ってくれているのは嬉しい。あとはそうまでさせた向こうでの佐助さんの周囲環境に大丈夫なのかと心配も混じるが。


ちなみに、祖父母への呼び方は様々である。年齢的に孫というのがどんぴしゃなメンバー、その片方伊達政宗君は自信たっぷりな殿様らしく普通に呼び捨てているし、もう一方の真田幸村君は普段から丁寧なようで惣十郎殿ハツ子殿と。各々小十郎さんと佐助さんが従者なのだが、年上の彼らよりも親離れしているような感じである2人はよくよく元気に外を駆け回ってはお腹を空かして戻ってくる。何かとお互い張り合うらしいが可愛いものだ。ちょっと背伸びをしてマセた弟と、まだまだ純粋で素直な弟といったところか。従者達曰く、それでもやはり此方へ来てから幾らか歳相応になったようで、尚可愛らしい。
元親さんは爺さん・婆さん、元就さんは爺・婆、小十郎さんは老翁・奥方、佐助さんが爺様・婆様と呼ぶのだが、後者の彼は時折祖母をハツ子ちゃんとも言ったり。お茶目な彼女がハツ子ちゃんでも構わないのよと笑ったに由るところであり、他には前田慶次君がそう呼び掛ける事が有る。まぁ基本的に彼は爺ちゃん婆ちゃん呼びだが。


慶次君は、私の中では気のいい友人のようなポジションが定着している。陽気で、楽しい事と恋の話が好きで、狙ってか素か、常に緩衝材の役割を買って出るのである。こういう人間が1人でも居れば、まぁ何とかなってしまうのだろうと、そんな風に此方まで楽観的になってしまうような人。彼の友達の子猿の夢吉君はもう取り敢えず可愛い。
そこに加えて、無口に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる風魔小太郎さん。当初しばらく彼の存在を知らなかった(様子見でずっと隠れていたらしい)のだが、喋らない代わりに身振り手振りを用いてコミュニケーションを図ってくれる辺りとても親切な人だ。細かいところにもよく気が付くし、最近では薄ら口元を綻ばせて笑ってくれるようになったのが嬉しい。


そして、これらの誰よりも先に私と出逢った、イチハツ君。様々なシーンにおいて彼は常に歯車のオイルの役目を担っていた。潤滑油そのものであると同時に、それを適確なタイミングで、適確な量だけ注し込む人間。
慶次君と夢吉君、小太郎さん、イチハツ君、それで私、この4人と1匹でお茶を飲みながら煎餅を食べながら、まったりするのがここのところの日常となっている。





×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -