東北の城で



偵察対象は広い庭先で鍛練中である。濃淡の違う青で固めた装いで刀を1本振るいに振るっているのだが、そのたった1筋の刃からでも、迸る電撃は到底並のものでは無い事が窺える。
光の屈折を応用した同化の術はあくまで視覚に対する隠遁の手段。声を隠せはしない。だから小声も小声にひそひそと喋るのだが、気付かれた様子は未だ無かった。




「先輩アレ相殺出来ます?」

「…どうだろうな。チャクラから成ってる訳じゃないから出来ないかもしれないし、要は電流なのなら出来るかもしれないし」

「それを言うと風遁で防げるか否かってとこも分かんないよなぁ」

「無茶は無しだぞ」

「ウィーッス」




気の無い返事はいつもの事だ。それを信用していい時と信用してはならない時とが有るというのも右に同じく。言い付けたにも拘らず知ったものかと自分勝手に振る舞う事も多い後輩に、カカシはひっそりと溜息を吐いた。それを一概に悪いとは言わないが、その分厄介が増えたり要らぬ心配までする羽目になるのである。
まぁ、そもそも今回は上からそういう命が下っているので話は別なれど。立ち上がったレンに倣えば、伸びた背筋が気持ちいい。




「まー今はまだ隠しといてくれていいですけど」

「ん?…あ、相殺の話ね」

「奴さんが本気出してこなきゃあのくらいのは私でも流せるし」

「そーね。大丈夫、お前の実力に関しては俺は何も心配してないよ。お前もお前でちゃんと自分のレベル把握してるしな」




そうして頭をフード越しにぐりぐりと撫でてやると、されるがままを取る。帰ったらもっとやって先輩、なんてまで言うものだから、やはりこの後輩は結局、カカシにとって可愛くて仕方が無いのだ。お互い別々に各国へちまちまとした偵察に出ていて、ここでようやっと、実に1週間振りに顔を合わせた訳で。"余所者"2人きりのセカイでは、レンが甘えるのは尚更カカシにだけ、なのである。


少女が同化の術を解けば、敢えて駄々漏れにさせた気配に気付く国主やその側近がほぼ間を置かずに警戒と緊張感と殺気を膨らませた。問答に応じるとでも思うかと、後輩は何も言わずに小手調べの印を結ぶ。先輩である彼は手出しをしないため、己の身を守るに徹するのみなので隙無く立ったままだが。





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