桐皇VS北央



主将同士が挨拶を交わす。にこりと穏やかで人当たりの良い笑みを浮かべた透坂。今吉も同様に朗らかな表情を見せつつも、眼鏡の奥のごく薄らと開いた目で相手を注意深く観察した。双方、胸中に現れる。この男は同族だ、と、その結論が。




始まった北央学園対桐皇学園の練習試合は、初めから青峰が出ていた事が大きいのか、終始桐皇がリードしていた。桃井の分析も一役買っているだろう。徐々に点差が開いていき、勝利は黒軍のものとなる。


しかし今吉を筆頭に、桐皇の面々はほとんどとして喜びの表情を浮かべていない。釈然としない、腑に落ちない、等と言い様は幾つも在ろう。軽いミーティングが一区切りつくと、ナメられたもんやな、と、彼は苦い笑みを浮かべた。静かな苛立ち――憤り、でもあるか。尤もな事だと桃井は目を伏せる。北央、というよりも、特に2名、面識の有る透坂守と、そしてもう1人、白澤玄光という男子。彼らが手を抜いていたのは明らかだ。他3名、殊金森猛流などは、あれは本気でやっていたと判断出来る。終わった今もああして、向こうのベンチより悔しげな声が聴こえてくるのだから。
とにかく勝利は勝利でしょう、とだけ原澤が言った。そして撤収支度を促してくる。各々思う事は有りながらも、それに従う行動へと移るのだった。


透坂が、はいはい皆お疲れさーん応援の方もお疲れさーんありがとうね、と笑み1つ。汗をだらりだらりと流してはいれど、金森の比では無い。それは白澤についても同様である。息こそ乱れて肩を上下させてはいても、涼しい顔をしているのだ。金森、銀鏡、茶竹、透坂、白澤の順に、運動量や疲労の度合いは少なく低くなっていく。しかしどうしてか誰も、控えの面々にしても、負の感情を面に出している者は1人と居ない。――何故なのか。
桐皇陣が撤収支度を始めた少し後に、彼らもまた荷物を纏めていく。スポーツバッグを茶竹に預ける、透坂。あちらも起こす行動は同じらしい。




「今日はありがとうございました」

「いやいや、そらこっちの台詞や。――中身はどうあれ、楽しかったしなぁ」

「…それは良かった」




綺麗に形取られた笑みで伝え合うもの。或いは、それを潜めながら。彼らは再び、初めの時とよく似た空気に身を浸す。




「………ま、取り敢えずや」

「うん?」

「色々ウチのマネジから聞いてはおんのやけど、ワシ、もっと個人的なところでそちらさんの事知りたいねん。せやからアドレス、交換してくれへんかなぁ?」

「I see, of course. じゃあ俺も色々と訊いちゃうね?」

「おぉ、ええでええで。大歓迎や」

「でも変な質問は勘弁な?」

「例えばどないな」

「例えばー…ノンケかゲイか或いはバイか、みたいなのとか?」

「アッハッハ!んなもんせぇへんわ!」




――記号の羅列が行き交った。





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