透坂と桃井、銀鏡と青峰



今日はストバスをしに行くらしい。そんな銀鏡に付いていった透坂は、そこで2人の人物と出会う事となった。茶竹以上だろう背丈を有した、肌もかなり黒い、目付きの良いとは言えない男。名を青峰大輝――知ってはいたが、こうして実際に面と向かうのは勿論初めてだ。彼はじろじろと此方を眺めてから、銀鏡とバスケをするためにコートへと入っていく。
対してもう1人の可愛らしい女子、サラサラのロングストレートと豊満なバスト、垂れた目はさぞや男を惹き付けるだろう。彼女はにこやかに自己紹介をした。




「そっかー青峰君とは幼馴染みなんだ」

「もー大ちゃんほんと目が放せなくって!透坂さんは…銀鏡君とは?」

「先輩後輩。でも俺シロの事大好きだし、シロも俺の事大好きだよ。変な意味じゃなくてね?」

「ふふ、解ってますよー。…男の子も男の人も、いいですよね」

「…まぁ、女の子よりは楽なのかもしれないよな」




羨望や憧憬を含んだその目はコートの2人に向いて。何か苦労した事も有るのだろうな、と透坂は、それ以上を言わずに桃井の頭をぽんぽんと撫でる。ハッとした彼女は苦笑と、何処か恥ずかしげな、そんな顔をした。




「そういえば、」

「うん」

「透坂さんはバスケ、しないんですか?」




流れを打ち切って次の話題と差し出されたもの。きっと来るだろうとは考えていた事だ。此方を見上げてくる桃井の瞳はただの興味ばかりを映しておらず、奥に、もっと鋭い何かを湛えている。目を付けられる手前か、はたまた既に、か。しないのかと問うてはいれど、恐らく否などと答えようと信じてもらえる事は無いだろう。まぁ、実際応であるが。




「するよ?」

「見たいなぁ透坂さんのバスケ」

「うーん、また今度かな」

「えー」

「可愛いけど折れないからねー?」

「ざーんねん」




クスクスと2人で笑い合う。確か桃井さつきと言えば、キセキの世代のマネージャーをやっていたはずだ。情報収集と分析に長けた彼女の事、帰って早々に此方を調べ上げに掛かるに違い無い。透坂の"目"をして視ても、それが如何に優秀であるかははっきりと判る。マネージャーという役は恐ろしくこの娘に適したもので、相当に手強い事も知れて。




「――おい」

「あ、大ちゃんもういいの?」

「お前じゃねーよブス」

「おいおい女の子にブスは無いでしょ」

「あ?いいんだよこいつだし」

「良くない!それ傷付くんだからね!」

「よしよし、さっちゃんは可愛いし美人だぞー」

「…っ透坂さぁん…!」

「ウッゼ。おいアンタ、俺とワンオンワンしろ」

「えーやだ」

「拒否権ねぇから」

「強引だな…ん?」




幾らか口の端を歪めた青峰に困って笑っていれば、いつの間にか傍に来ていた銀鏡が透坂の腕をトントンと叩く。そちらへ目線を下げると、それは思わぬ伏兵であった。




「俺も、トオルとダイキのワンオンワン、見たい」

「………。…よし、じゃあやろっか青峰君」

「透坂さん銀鏡君に甘いんだ」

「いやぁ駄目だね、勝てないね。可愛くってさぁ」

「でも確かに銀鏡君すっごい可愛いです!…銀鏡君、シロ君て呼んでもいいですか?」

「…?…うん、別に、どうぞ」

「やった!」




――1on1は青峰の勝利に終わり、桃井は透坂・銀鏡とアドレスを交換するに至って本日のハイライト。





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