跡部と透坂
「おい」
「…あ」
「え、誰?」
「いやー、合縁奇縁?」
「少しいいか」
「OK. 皆先帰っていいよ、また明日な」
「おー、じゃなトオル」
「じゃねー」
「で、何かな。えーと跡部君?」
「あぁ。跡部景吾、氷帝学園高等部2年だ」
「あー氷帝ね、てか跡部ってもしかしなくても跡部財閥?」
「まぁな」
「ふぅん、へぇ、成る程ねぇ」
「…」
「俺の事って調べたの?」
「そうだ。北央学園3年、透坂守。アメリカからの帰国子女で、日本人の父親と、アメリカ人とロシア人のハーフの母親が居る。他にも言うか?」
「あはは、要らないかな。自分の事だし。で、用って?」
「これと言って特には。ただ、少し興味が湧いてな」
「あの時俺が去り際に言った事?」
「たったあれだけの接触であそこまで言うとは、流石によく観てるってだけじゃあ説明しきれねぇだろう」
「そうかな。それじゃあ勘て事で、どう?」
「………"インサイト"」
「…」
「持ってんだろう、お前も」
「…持ってたとして、それが何かな。何か問題でも有るとか?」
「そういう訳じゃねぇ。俺以外に持ってる奴は初めて見たから、どんな奴かと思っただけだ」
「そっか。ご期待には添えたかな?」
「あぁ、中々。お前も大概食えねぇ野郎らしい。…それに、"インサイト"だけじゃねぇ。他にももう1つ、何か持ってるな?」
「ご名答。うーん、"鷹の目"って知ってる?」
「…いや、」
「バスケにはこれが結構使えるもんでさぁ」
「どういう能力だ?鷹の目、っつーくらいだから、空間把握か」
「そ。まぁ詳しく説明するとなるとアレだから、簡単に言っちゃえば空間認識だな。アングルを様々に変えて視る訳よ、だから死角も結構カバー出来ちゃう。バスケにはポイントガードってポジションが有って、指令塔みたいなもんなんだ。広くコート内を視てないとならない。うってつけの能力って訳」
「"インサイト"に"鷹の目"…恵まれてるな」
「ありがたいもんだよねほんと」
「――…お前はあいつの何を見透かした?」
「…、あいつって?」
「しらばっくれんな今更」
「あはは。侑士、君だっけ」
「忍足侑士、同級だ」
「侑士君ねー。…難儀というか、ちょっと面倒というか」
「………」
「キミもそう思ってるだろ?跡部君。まぁ俺が首を突っ込む事でも無いし、さして興味も無い事だけどな。どうせこの先交流も無いだろうしね」
「…あいつは、どうもお前が気に入らねぇらしい」
「見透かされたって本能で感じたのかな?」
「だろうな。俺としちゃあ、これが機かもしれねぇとも思ってはいるが」
「やだほんとお父さんだね跡部君」
「…アーン?」
「侑士君、お母さんだけど擦れちゃった長女、てとこも有るみたいだねー。頑張ってお父さん」
「………言われるまでもねぇよ」
「悪いね奢ってもらっちゃって」
「付き合わせたのはこっちだからな。…透坂」
「ん?」
「俺はお前の事、気に入った。いい目を持つ者同士、是非とも仲良くしてもらいてぇもんだな」
「えー、いい目って自分で言っちゃうんだ跡部君。さっすが」
「相応の評価だろうが」
「まぁそうだけどね。俺もキミの事は割と好きかもしれない。どうせならアドレス交換しちゃう?」
「あぁ」
「OK.」