透坂と今吉と銀鏡と青峰、に氷帝



運の悪いものである。やたら賑やかなその一団は何と隣のボックスに着いてしまったのだ。総勢6名、そして男子。ガタガタとテーブルを合流させる間にも何だどうだと喋り合っている。とにかく、煩い。不快を全面に露骨に出した青峰と、ん、という風に眉を顰めた今吉。透坂はちらりと一瞥しただけで、銀鏡と言えば全く気に留めていないようであるが。
彼らから隠すように口元に手を当てがい、何や喧しやっちゃな、と唇を動かす。そんな今吉に透坂は一笑した。




「出ようにも、青峰君もシロもまだ食べ終わってないしねぇ」

「透坂、ラスト1本やで」

「お、じゃあ戴きー」




2人の間に置かれた皿、元々はフライドポテトが盛られていたのだがこれで空になったという訳だ。あとは青峰と銀鏡が食べ終わるのを待つのみである。




「跡部と侑士はまだかよー」

「もうすぐ来んじゃねぇか多分」

「先頼んじまおーぜ!」




その会話から察するに、まだあと2名が加わる余地が有るらしい。その跡部と侑士という人間がどのようかは知らないが、これ以上煩さが増す前にこの空間から離脱してしまいたいものだ。他のお客さんもちょっと煩がってるねー…、なんて、ぽつりと透坂も苦笑と共に零す。
――そんな事を今吉が、笑みの裏で考えていた時。




「おっせーぞ侑士ィ!」

「おーすまんすまん」




そちらに目を遣って、ギョッとする。無論それは透坂にも視えたようで、あれ、と呟いた後に振り返って。Oh, snap!なんて、聞き慣れないが恐らくは驚きを示すものに違いない。とは言えこの男の事だ、声に映した程の動揺等は無いのだろうが。
向こうも此方に気付いたらしく、眼鏡の奥の目を見開かせる。





「…おぉ?!!!!ちょっ侑士が2人?!!!!」

「、んな訳有るかいな。俺はこっちやで岳人」

「…だが、驚く程似てんな」

「ん…?!ちょ、そっちのキミはキミで青峰とそっくりやないか!」

「アーン?」
「あ?」

「うっわマジだ?!」

「えー何だこれ、ぶ、は!」




侑士、と言うらしい方は今吉と、そして残るが跡部だろう、そちらは青峰と。片や容姿が、片や声が、各々ひどく似通っていた。今吉らに至ってはどうやら関西弁を話すという点においても共通しているらしい。その場のほとんどの関係者達が、こんな事も有るのかと感心する中で、数名は我関せずと自分のしたいようにしているが。銀鏡と青峰もその内だ。




「…トオル」

「…ん、あー食べ終わったか」

「…うん」

「美味しかった?」

「…うん」

「ごっそーさん」

「青峰も終わったようやな。ほな行くか」




何処までもマイペースな銀鏡と、ある意味で同じくマイペースな青峰に透坂と今吉は意識が戻る。伝票を持って立ち上がり、保護者2人は顔を隣へと向けて。入れ違いで席に着いたような形になった彼らに揃って笑顔を見せた。




「それじゃあ、何かまぁ、失礼するね」

「次どっかでまた会うたらおもろいなぁ」

「それとさぁ、」




キミらかなり煩かったから店員に注意されないようにな、と。笑って見下ろした柔らかな髪色の男の、鮮やかさの無い目。眼鏡の、自分達の仲間である1人とよく似た方もまた、本心では煩く思っているのだろう笑みで以て此方を向いている。ピクリと片眉を上げた跡部は、溜息を吐いて。




「…迷惑掛けたみてぇだな。悪かった」

「俺らだけに謝られても困る事だけどね」

「それを言われちゃあ何も言えねぇだろ」

「あっはっは、正論やな」

「な。まぁ頑張ってよ"お父さん"。そっちの"お母さん"も」

「、」




にこ、と笑う男は、先に退出を始めていた3人を追って去っていく。




「…何やあいつ」

「…。…中々、面白いじゃねーの」

「は。ほんまに言いよってんかそれ」

「アーン?何だ、嫌そうな顔して」

「…何でも。さー何食おかな」





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -