透坂と今吉と銀鏡と青峰
先の練習試合において、すっかり打ち解けたらしい透坂と今吉の様子である。何がそんなに馬の合った事なのか、とは言え青峰にはどうでもいいものでもあったが。銀鏡といつもの場所でバスケをやっていた彼の元へと、ひょっこり姿を現したその2人を加えたランダムタッグでの対戦数回の後、近くのファミレスにやって来て現在。必要最低限にしか喋らない後輩組に対し、透坂と今吉はぺらぺらと語り合っていた。
「いまよっちゃんイケそう?」
「はっはっは、誰に訊いとんねんそれ」
「あはは、それもそうだな」
今の話題と言えば、彼らが進学する大学の話だ。どうやら同じ大学を第一志望としているようで、学科こそ違うもちょっとした盛り上がりを見せている。ボリューム満点のハンバーグを食べながら、女子かよ、と青峰は心中で突っ込んでいた。銀鏡が口に運ぶのは如何にも甘そうなパフェのチョコプリンである。
「…にしても、ようそないなもん食えんなぁシロちゃんは」
「だよね。俺無理だもん」
「ワシもや。青峰もやろ?」
「あ?…あぁ、無理」
食べてもいないのにまるで打ち消そうとでもするかのように。渋い顔をした今吉がズズ、とブラックコーヒーを流し込む。口の中を苦味で満たしてようやくと表情を緩ませた彼に、紅茶を飲んだ透坂がクスクスと笑った。
「シロはスイパラとか余裕だもんねー」
「ゲッほんまかいな」
「うん、女の子と」
「は?何や彼女居んのかシロちゃん」
「いや、彼女じゃないけどめちゃくちゃ仲いい子」
「ほっほー…青春しててええなぁとは思うけど、いや流石にスイパラなんぞには行かれへんわー」
「でも可愛い女の子が甘いの幸せそうに食べてんのとか、逆に美人できっつそうなお姐さんが甘いの前にして顔輝かせてんのとか、良くない?」
「ギャップやなギャップ。あ・れ・は堪らん」
そもそも美味しそうに食べる子とか幸せそうに食べる子とかもうほんと可愛いよなー、だの、太るーとか言うて食わんのはあかんよな、だの。何を盛り上がってんだこいつら、とはまたも青峰の心中。添え物のソーセージを咀嚼しつつも顔にもそのまま出てしまっている。
――そして、店内にガヤガヤと、一段と賑やかな集団客が入ってきたのはその時である。