金森



俺はめちゃくちゃバスケが好きだ。どれくらい好きかって言うともう飯食わずにずっとやってたいくらい好きだ。…いやでも腹は減るから飯食うけどな。朝からバスケやって腹減ったら飯食ってそんでまたバスケだな。あ、流石に風呂も入る。それに寝る。あれ俺自分で思ってる程バスケ好きじゃねーのか?
バスケも勝負事だから、やっぱ誰かとやり合った時には勝てた方が嬉しい。負けたら悔しい。でも勝ち負け気にしねーでやるのも好きなんだよな。ダチとふざけてやんのとか、楽しけりゃ結構何でも良かったりする。そ、俺、バスケ好きだけど、楽しいから好きって感じ。サッカーとか野球とかも楽しいけどやっぱ1番楽しいのはバスケで、だからバスケが好きなんだ。あと、ボールに触ってるあの感覚っつーか、ボールの感触とかも好き。


トオルにサタにクロにシロ、そんで俺。こいつらの中では多分、つかぜってー俺が1番バスケ好きだ。自信は有る。トオルにキンちゃんほんとバスケ好きだねぇって笑われた事有るし、あいつがそう言うくらいだから結構なもんなんだと思う。だってあいつそういうの外した事ねーから。あとクロにもお前ほんとに楽しそうにバスケするよねって言われた事有る。だって楽しいんだもんバスケ。
トオルとサタとクロとシロの中で言うと、俺の次にバスケ好きなのってトオルとシロだと思う。何事にも当たりいいトオルは、実はすごく、冷めてる奴だ。長く付き合った奴はそれに気付くはず。結構、腹の底が見えないとこも有る。でも注意してれば、判るんだよな。好きじゃないもんにはぜってー好きって言わないんだよトオルって。楽しいよね、とか、面白いよな、とか、そういう感想を言うんだ。だから、好きだよバスケ、って笑ったの見た時にはすっげー嬉しかった。シロなんかはもうめちゃくちゃ判りやすくて、あいつ、ほんとに好きなもんにしか興味示さねーからな。あとはこう、意識が向いてるもんとか。部活中休憩してる間もボール抱えてずっとゴール見てるし。


残るはサタとクロだけど。正直サタは付き合ってくれてるって感じがしたりする――なんて思った事もそりゃ有って、で、ある時それをそれと無く言ってみた事が有るんだ。




『何か…わりーな、付き合わせちまってて』

『え、何にだよ』

『………バスケ』

『…何だ猛流、お前そんな事考えてたのか』

『いやー…いや、別に責めたいとかなんかじゃなくて、』

『いいよ、大丈夫。それは解ってる。なぁ猛流、何も仕方無くバスケやってる訳じゃないぞ俺は』

『………』

『半信半疑な顔しないでくれないか。本当だぞ?まぁ確かに、バスケそのものは…本当の事言うなら、特別好きっていう事は無いけど。でも、お前らとやるバスケは、楽しい。楽しいものに仕方無く付き合う訳無いだろ』




と、こんな感じで。お前は変なところに気を遣うからな、なんて笑われて肩叩かれたワケ。うるせーよバカ。


そんで、クロだ。あいつは天才肌ってやつで、大抵サラッと何でもこなしちまう。だけどクロはそれを何とも思ってない。ほんっとに何とも思ってない。良くも悪くもだ。今まで天才に逢った事なんて無かったから、興味本位で訊いてみた事が有るんだ。天才ってどんなもんなのかって。凡人は哀れだとか、やっぱそういう事も考えんのかって。
そしたらクロは、いつもの気怠そうな表情のまま言った。




『どんなもんかって、別にどうも無いけど。つーかそもそもんなどうでもいい事考えた事ねぇし。だって天才と、何、凡人?その2種類同列で考える事自体馬鹿だろ。リンゴとメロン並べてどっちが優れてるかって比べるのと同じくらい馬鹿らしいわ。それよりも僕はお前が純粋な本心でそれ訊いてくる事について興味が有るよ、お前ほんとすげぇ』

『…お、おう?…取り敢えず俺もお前がすげーという事は理解した…?』




バカだって言ってんの解ってないところとかもすげぇわってうるせーよバカ!マジうっせ!


…話を戻そう。で、そんな天才、クロこと白澤玄光だけど。あいつって見るからにやる気無さそうっつーか、普段の表情が表情だし、あとその表情がそもそも滅多に変わんないしで、あんまあいつを知らねー人間には冷めてる奴だって思われてるんだろうと思う。俺も最初の頃はそうだったし。
でも付き合ってる内に解ったんだ。冷めてるように見えて、実際結構冷めてるとこも有って、でも内側の内側は、すっげー、熱い。すっげー真剣で、すっげー真面目。っても本気出したら誰も付いてけねーし、そういうの解ってるから大分レベル下げてやってる。矛盾かもだけど、でもそういう感じ。ちゃんと向き合って対してるけど、手は緩めてる。それは真剣じゃない真面目じゃないって意見も有るだろうけど、俺はクロのそれが、クロなりに皆と上手くやろうとしてる結果なんだって解ってるんだ。クロを悪く言う奴も地味に居るけど、同じかそれ以上にクロの事好きな奴が居るのも知ってる。あいつ容赦ねーけど実は優しい奴だからな。多分クロは、特に何が好きどれが好きって、そういうのがあんまり無いんだと思う。その代わりに、ちゃんと向き合う。そういう感じ。




つまり結局、バスケ出来りゃそれでいいんだ、俺は。楽しくてバスケやってるって奴らと、楽しくバスケやれれば。だからって温いバスケばっかするつもりはねーけど。でも公式戦出れない状態だとしても、練習試合したり、あとワンオンワンなりスリーオンスリーなり、強い奴とやって、それでスカッと出来れば、それで。――だからウチの皆には、めちゃくちゃ感謝してる。トオルにサタにクロにシロってそいつらだけじゃなくて、部員皆にな!





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