再会と説明



「――う"おおぉい?!てめぇギルかぁ?!」

「…知り合いかいスクアーロ」




驚きに満ちた声を隠さずに響かせた"スクアーロ"に、よう、と親しげな言葉を返した"ギル"は、サングラスで見えない目元の代わりに口へ弧を描かせて微笑みを示している。滲んでいる再会の喜びは、それを本物だと思わせるだけの演技力で以ての事か、否か。黒の先を透かせやしないかと誰とも無く探ってみても、どうも分からない。彼らの力量不足というはずが無いのだが――と、理由は間も置かずに判明した。あっさりサングラスを外した"ギル"の、暗みを帯びた金は確かに、嬉しそうである。疑っても意味が無かったのだから叶わなくても仕方も有るまい。
打って変わり、喜色の表情を浮かべて大股に歩み寄っていく"スクアーロ"は、辿り着くと彼の肩を叩いた。




「久しぶりだなぁ!ボンゴレに居たなんてこれっぽっちも知らなかったぜぇ!」

「一応表立って動いてはいなかったしな。ま、相変わらず元気そうで何よりだ。ところでスクアーロ」

「あぁ?」

「お前、任務行かねぇでいいのか?」

「…う"おぉい!そうだったぜぇ!やべぇ時間が…っつーか何でお前がそれ知ってんだぁ?!」

「本部での俺の最後の仕事は任務の書状の作成だった。お前向きの、な」

「成る程なぁ…まぁお前ならこっちは後回しにしても大丈夫だろぉ、行ってくるぜぇ!」

「おー、行ってらっしゃい」




最終的には鼻歌でも歌い出しそうな様子にさえなっており、それ程かと"ベル"等が些か驚く始末。
靡く銀髪を見送って、その姿が扉から消えていく。"ギル"の着る黒いコートの袖の部分をすぐ傍らで握っていた少女も小さく手を振っていたが、既に彼は残った面々へと向き直っていた。ほんの幾らか、顔を見せ始める緊張感。敵意とするには優しいが、友好と取る事はし難い。




「…さて、初めまして、ヴァリアー幹部のご一同。と言っても全員じゃあねぇが。当方、ギル・ウォルターと言う者だ。ボンゴレ9代目、及び本部カポ連中により決定が下された此度の騒動においての処罰に則して、本日から向こう3年間、此方で監視役をさせてもらう事と相成った。…漣、お前も彼らにご挨拶を」

「あい。当方、漣と申します。ギルと一緒に監視役をする事になりました、どうぞよろしくお願いしますです」




目を閉じると共に軽い会釈を1つ、それは実に慣れたようなもので、ひどく洗練された流れの動作である。薄らと微笑みを浮かべたままだが、決して物腰柔らかという訳とは違い、隙を一切見せない口調、声音、目、いたく整った面も手伝い、きっと彼を女は放っておかない事だろう。同じ、では無い、しかし、何処か重なって思える。…変ねぇ、と内心首を傾げた者が1人居た。
少女はと言えば、それこそ談話室へ入ってきたその時からずっと、無表情を崩す事が無かった――"スクアーロ"の声量は、普通初対面である人間は大概驚いたり身を引かせたりするものだ。ギルに挨拶を促され、やはり何の感情も載せないまま、だのにおどけたようにぴしりと手を敬礼様にして口を動かす。男の隙の無い空気もだが、漣も漣で余り本意が読めない。




(…へー)




"ベル"のへの字の口が、逆の様相へと変わった。何か面白くなりそうじゃん、と、根拠の無い予感である。





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