訪問



通達が有った日から3日後の事である。午後1時、昼下がりの談話室にはヴァリアーの幹部計5人が揃い、本日やって来るという者を待って各々適当に時間を潰していた。本部より監視員が派遣されてくる――それを知ったのはつい先程だ。こういった事は特に珍しいでも無く、当日になって告げられて、あぁまたか、という程度である。文句を言ってもどうにもならない。そもそも相手は"あの"ボスなのだ、むしろ黙って頷いておく方が賢明な判断だというのは明白だった。若干1名、もう任務に出なければならないのにと声を荒げた(それでも、彼は普段からがなり立てて喋る人間であったので余り差は見られないが)者は居たにせよ。




「う"おおおぉぉい!監視員はまだかぁ?!」

「っべー、王子腹いっぱいで眠くなってきたんだけど」

「朝食の前までは寝てたんじゃないのかいベル」

「ししっ、ゲームしてたらもう朝だった」

「…自業自得だね」




ベル、と呼ばれた少年が、さらさらの長い前髪を揺らしながら笑って言った"朝"とは、世間で謂うところとは異なっている。
ボンゴレの独立暗殺部隊であるヴァリアーが活動を始めるのは、早くて昼頃から午前3時前後まで。つまり彼らはほぼ昼夜逆転したような生活を送っている訳である。故に一般的な時間帯の区分とはずれが生じるのも致し方無く、簡単に言うのならこの場合、"ベル"は丸1日近く睡眠を取らなかったという事になるのだった。昨日は任務から帰還した後、どうも目が覚めてしまって、と彼は述べる。




ローテーブルに置かれていた綺麗な水色の紅茶へ手を伸ばす、モヒカンにサングラスという出で立ちの1人。ソファーに座り、苛立たしげに貧乏揺すりをしていた銀髪でストレートロングの男が、もう待てないと荒々しく立ち上がったところで丁度、ノックノイズが部屋に響いた。"ベル"に頬を抓まれ遊ばれるのを嫌がっているような、フードを被った赤ん坊らしき者(先程喋っていた事も加わり、尚更年齢が疑わしい)も、腕組みをして無言のまま仁王立ちしていた者も含め、全員の注意が扉へと向く。
蝶番が僅かに軋んだ音を聴かせながら、開いたそこから姿を現したのは――男。そして後に顔を覗かせたのは、少女であった。





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