思案



無言、沈黙、静寂。銀髪の男は何処か気まずげな表情だが、銀髪の少女はただただ彼を見つめていた。我慢比べ、という訳では無い。スクアーロは漣の熱い視線をどうにかひたすら受け止めていた。何故この少女は何も喋らないのか。そっちから訪ねてきたんだろうがぁ!と内心は半ば逆ギレ状態である。だがしかし、どうもそれを叫ぶ事が出来ずにいる。何故なのかは自分でも分からない。故に、逆ギレの理由の1つともなっていた。――嗚呼、駄目だ。そろそろ我慢も限界である。彼は低く唸るように言った。




「…おい、ガキィ…」

「あい」

「あい、じゃねぇ!一体何だっつーんだぁ?!」




手前から訪ねてきたくせにだんまりか、マジでこいつ何なんだ、などとぶつぶつ喧しく零すスクアーロに対して小首を傾げた少女。漣はただ、この男がギルの旧友である人間かと少し(そう、4分は彼女にとってはそれと言える程度の長さなのだ)眺めていただけなのである。どうやら彼を不快にでもさせてしまったらしいと考え至り、本題に移ろうと口を開いた。…ギルは、上手くやってるんだろうなぁ。なんて思い遣りながら。




「ご飯は皆で食べた方が美味しいので、これからはメイドさんが呼びに来たら食堂に来て下さいです」

「…、………あー…訊きてぇ事は幾つか有るが、取り敢えず、」




少しの困惑と大きな怪訝を混ぜた表情で、スクアーロはそれを問うた。XANXUSはその事を知っているのか、と。答えは当然イエスだ。話は通してあるし特に文句は言われなかったと漣が述べるので、彼はならいいがと躊躇いがちな頷きを1つする。まぁあのクソボスが素直に応じるとも思わねぇがなぁ、なんて思いはすれど口には出さない。これを言い出したのがギルであるのかこの少女であるのかは判らないにせよ、余り期待は出来ないだろう。相手は何せあの男だ。




「スクアーロは、」

「、あ?」

「皆で食べるの、嫌ですか?」

「…良くも悪くも考えた事ねぇ」

「そうですか」




何を思っているのか分からない顔で頷かれる。不気味だとか気持ちが悪いだとか、そういう事は感じない。ただ、少しだけ惑う部分が有るのだ。何の感情も載せないような、崩れるというのを知らないような表情だというのに、不快なものが湧き起こる事は無く単に何なのかと眉を顰めてしまう。はて、とスクアーロは内心で首を傾げた。あの旧友でさえ、ほんの時折底の知れないものを顔に載せるというに。それは彼の男の人間性や本性等を知っているが故か――或いは、この少女から滲み出る純粋さを自然と感じているからなのか。


徐に手を伸ばした。漣は身構える事一切無しに、スクアーロの一挙一動を見つめている。心中での溜息はギルへと向けたものだ。この警戒心の無さはよろしくねぇだろぉ、と、わしわしと撫でられるのを甘受する少女へ、彼は静かに目を細めた。





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