「…さっ!とにもかくにも目出度い話には違いない、今夜は豪勢な晩餐会にしようじゃないか!」

「そう奮起するな小娘、6時には此処を出るからそのつもりでおれよ」

「ほーお?また遠見かい賢王、何処ぞの料亭でも予約済みかね」

「フン、当然よ。せっかくの機会だからなぁ、2年先まで予約が詰まりきってるとかいう飯屋に1室捩じ込んでおいてやったわ」

「…札束で頬を叩いて?」

「戯け、みみっちい事を。順番だ何だとあまり面倒だったんで店毎買い取ってやっただけよ」

「Oh…いや、うむ、それぞ賢王だな」

「あ"ー、喜んでいいのか悪いのか…」

「王様は愛情の与え方が豪快というか、スケールが違うからねぇ。ちなみにどんなお店なの?」

「待て、…此処だ」

「?!!えっうわ此処、」

「おや、知っているのかい?」

「知ってる…というか、いつかは行きたいって思ってた店…」

「やったじゃん零くん、叶ったね」

「う〜わ〜…おーさまありがとぉ…」

「良い良い。慶事に贈り物は付き物であろうが。せいぜい励めよ零」

「、ん…!」




「中々悪くない」

「王様…もっと素直な言い方してあげたら?」

「フン。何であれ今後も有用そうであるなら、幾らか手を加えておくのも良いか」

「ギルギルマシーン並に魔改造するのだけはやめておくれよ賢王」

「アレは、…だからアレは魔が差した結果だと言うとろうが!若気の至りだ!」

「えっ王様にも若気の至りとか有るんだ…」

「ぐ、」
「有った。ものっすごい酷いのが有った」
「司馬懿ィ!貴様ァ!」
「だって本当のこったろう」
「ぐぬぬゥ…ソワソワ聞きたそうにするな零!! 」




「さ、てと。零くん」

「ん、ん?」

「何か他に聞きたい事、知りたい事、分からない事、有るかい?答えられる範囲で答えられる者が答えてしんぜよう」

「、…あー、そう、だな…。前の世界、って、どんな感じだったんだ?文化とか文明とか、地理とかさ」

「実を言うと今、此の世界とそう変わらん。というよりほとんど一緒だな。日本が存在し、アメリカやイギリスが存在し、ロシアも中国もイタリアもフランスも存在する。文化も文明も地理も、ほとんど一緒だよ。ただ2つ大きく違っていたのが、魔力・魔術、ひいては魔法というものが確固たる事象として存在していたという事と、此の世界よりも随分科学的発展が進んでいたという事、だな。今日デバイスはスマートフォンやタブレットが主流だが、それもそこそこ最近になってからのものだろう?彼方ではその倍程以前よりも同様の物品が出回っていたし、我々が所属していた機関では更に上の高テクノロジーだって開発利用されていたしね」

「所属機関?」

「――人理継続保障機関、フィニス・カルデア。人類の未来を語りし資料館、人類の未来保障のための機関、"地球という惑星の人類史の保障”を成し得る組織。魔術のみでは見る事叶わぬ、科学のみでは計る事叶わない世界を観測し、人類の決定的な絶滅を防がんとして各国共同で設成立された特務機関。表面上はいずれの国とも異なる、世界の中心に在る標高六千メートルの雪山の地下に作られた地下工房。地球上の最南端、西経零度にある南極大陸に建てられた、地球最大にして唯一の人理観測所」

「塩基配列や霊器属性の確認、指紋認証、声帯認証、遺伝子認証、魔術回路の測定等により、登録名と一致した霊長類の一員と認定され初めて入館を認可される。百年後に時代設定した、言わば中枢システムである『カルデアス』、その表面の文明の光を観測する事により、未来における人類社会の存続を保障する事を任務とする。――以上、当局概要目録より抜粋」

「…まぁ初代所長は非人道な実験の隠れ蓑にもしていたようだがな。これは後にある意味では評価される事ともなった」

「………つまり、要は………星を見て、人を守るための機関?」

「うむ、ざっくり言ったらそんなところだな」

「細かい部分は、全体像が壮大過ぎてイマイチよく分からなかったけどな…」

「いいんだよ、どうせ今や文字通り過去のものさ」

「非人道な実験、ていうのは?」

「我々サーヴァント、ヒト非ざるが人なるモノ、と、キミ達ヒトとを融合させる、というやつでねぇ。幾度となく失敗し犠牲が出ていたようだよ。ま、最後の最後で成功例は出たから全くの無駄ではなかったけれど、ね」

「ヒト非ざるが人なるモノ、サーヴァント…」

「現状キミの察しているところとしては?」

「…ギルガメッシュ、天草四郎時貞、司馬懿に盧美人…全て歴史上、或いはそれに相当する伝承や伝来の、人、だ。静さんには申し訳無いけど、ハサン・サッバーハだっけ?流石に分からないが、それもきっと同列のものなんだろうし。…という事は、サーヴァントとは、それらの存在を、もしくは概念が象られたモノを、…ライネスが言っていたように、核を与えて喚び起こす、そうされた者達の総称…で合ってる?」

「それはそれで間違いではない。時間軸の外に在る純粋な『魂』であり、無色の力、サーヴァントとは英霊の事よ。人類史に残されし記録の顕現でもある」

「英霊を英霊足らしめるものは信仰、即ち人々の想念であるが故に。その真偽に関わり無く、確かな知名度と信仰心さえ集まっていれば、物語の中の人物だろうが、概念だろうが現象だろうが構わず英霊足り得てサーヴァント成り得るのだよ。聞いた感じガチガチの枠組みだと思うやもしれんが、実際には割とフランクに、様々な英霊が現界していたものさ。例えば沖田総司やレオナルド・ダ・ヴィンチが女人だったり、クー・フーリンが全部で4人もクラス違いで存在したり、とかね!」

「は?お、沖田総司とレオナルド・ダ・ヴィンチがおん、え…?」

「あくまでもこれらは一例さ、何せあれやこれやと挙げていったらもうキリが無いったら。ちなみにそこな賢王、ギルガメッシュは全部で3人居たね」

「やめろ司馬懿黙っておれ」
「年食ってやっと落ち着いたこの賢王と若気の至りし貴様何様我様ギルガメッシュ青年と純朴ピカイチ子ギル君だ」
「司ィイ馬ァア懿ィイ!」

「というようなそんな中で、私は比較的のほほんと可愛がられてた、っていう訳なのです」

「成る程な…」

「あと、ライネスも王様も…何て言ったらいいかなぁ、"サーヴァントがサーヴァントであるままに、今此の世界に在る"んだって。理由は"あの"本人達をしてもよく分からないらしいんだけどね」

「…前の世界での、ヒトに無い力を持った状態のままで、という事か?」

「うん」

「――私達が推察するに、本体記憶が何らかの影響を与えているのではないか、と睨んではいるところでね」

「本体記憶。…さっき、人類史に残る記録の顕現、て言ってたよな。ほとんど同じものとして考えて、分身…や、この場合分体か、それが今目の前に居るライネスと、王様…?」

「うむ。賢くて何よりだ。サーヴァントとは、大元である記録から、顕現を果たすべく、そして顕現を果たせる程度にまで位格を落とす事で現界する、記憶の一端に過ぎん。大元の記録、本体記憶、これは『座』と呼称する場所に存在している。現世・下界で力を奮える程度にまで英霊格をグレードダウンしたのを、其処からちょっと引っ張り出したのがサーヴァントなのさ。そしてこのサーヴァントで在った連中が、何の因果かそれなり大勢、きちんとヒトとして生まれ直っている。尚且つごく一部のサーヴァントにおいては、ヒトとして生まれ直るまでもなく、本来の意味での肉体、言い換えれば肉の器を得て現界している…。便宜上肉の器を得る事を、肉を受けるというストレートな意味で『受肉』と呼んでいるのだけれど、何せ受肉する者しない者の差がイマイチ確かでない。共通点自体は有るんだが、同じく共通点を持つ者が受肉せず生まれ直っている例も有る。天草と芥がそれだ」

「我と天草は"以前"にも受肉を果たした事が有るが、我は此度も受肉したに対し、天草は単純に生まれ直しておる」

「そして私と芥、と言うとだが…私も芥も"以前"の在り方が、元々ヒトである者を依り代にして、中身に英霊を落とし込んだのがソレだ。ソレの私が今回受肉したのに対して…って、元来からして受肉した状態みたいなものではあったのだが、まぁこれは厳密にはちょっと違うんだけれどね、ともかくさて措き。ソレの私とソレの芥、前者は受肉したが後者は生まれ直しだ。共通性が在り、且つ共通しない事象とは如何に?という難問な訳さ」





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