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「その内２人が籍を入れてさ、そうしたら名字が、神谷にしろ尾形にしろ、どちらかになるでしょう。その時の事考えて、キミの事は百之助君て、名前で呼んでもいいかい？」
「構いませんよ、お好きに呼んで下さい」
「ありがとう、じゃあ百之助君だな。あ、僕の事はお義父さんでも親父さんでも何とでも呼んでね。達己でもいいしさ。――…百之助君の事をさ、漣てばあんまり話してくれてないんだ。自分としては教えてもいいけど、でもやっぱそういうのは自分で直接聞くのが道理でしょってさ。あはは、手厳しいよねぇ。まぁ確かにその通りなんだけどさ」
「…」
「百之助君は――あ。お帰り璃玖」
「………ただいま」
「百之助君、これ漣の弟の璃玖。ウチの末っ子」
「どうも。お邪魔してます」
「………（じーーー）」
「………（じーーー）」
「………」そそそっと寄ってきてすとんと尾形の近くに正座してぺっこりお辞儀する弟
「………」ぺっこりお辞儀し返す尾形
「………荷物、置いてくる」
「うん。もうすぐご飯にもなるしね」

「…人見知りな訳じゃあないんだけど、ものすごく無口なんだ。気を悪くしないでくれると嬉しいな」
「いえ、…構いませんよ」
「…しっかしキミ達、何だか似てるなぁ。不思議な感じがするよ、ふふ」
「…」
「似てるって言えば、璃玖と漣もなんだよね。２人は母さん似でさ。それで、もう１人、１番上のお兄ちゃんは、僕の兄貴似。で、僕の兄貴はと言えば、僕の父親…つまり子供らからすれば父方のお祖父ちゃんだね。凛々しいというか、男くさいっていうか、まぁそっち系。僕だけ仲間外れなんだよねぇ」
「そうなんですね」
「そうなんですよ」
「…」
「――百之助君は、ご兄弟は？」
「………弟が、１人」
「そっか、お兄ちゃんなんだね。確かにそんな感じだ。…２人は似てるのかい？それともあんまり似てない？」
「…全く、似ていませんね。あちらの方は随分と好青年です、ハハハ」
「そうなの？そっかぁ。百之助君はこう、めちゃめちゃ大人の男って感じ。イイと思うよ、僕なんてどうも半端らしくってさぁ…」
「――優しい父親、としては、十分過ぎると思いますがね」
「え、そーお？それは嬉しいねぇ」
「ご両親がそんなご両親だからこそ、彼女もあれだけ素直に育ってるんだと。…まぁ、俺なんぞの言う事ではありますがね」
「…百之助君は、ご両親は？ご健在かな？」
「…えぇ。健在、でしょうな」
「…あんまり、上手くいってないのかな、ご両親とは」
「………俺の母親にあたる人は、…俺の父親にあたる男の愛人、というやつです。ハハ」
「…そっかぁ。…そりゃあ、難儀だねぇ」
「可愛い大事な一人娘の相手がこんな男で、さぞがっかりされたでしょうな」
「、ええっ！まさかそんなぁ、やめてよ滅相も無い！」
「、」
「――僕と初音が大切に育ててきた子供が、自分の意思で決めた人を、親である僕らが否定なんて出来るはず無いんだから」
「…！」
「きちんと考えて自分で決める事が出来るように育てた自信が有るし、もしこの自信が無かったとしても…漣は、あの子はきちんと考えて自分で決める事が出来る子だって、それだけは自信を持って言えるよ」　「…漣は、まっすぐに見てる。まっすぐに、人を、百之助君、キミを、まっすぐに見てる」　「きっとそれは、キミもよく解ってるでしょう？…だからさ、自信を持ってあの子の傍に居てあげてほしいな」
「………」
「あっ、あと絶対元気でいる事！健康なのが１番だからね！健康でいれば幸せはくっ付いてくるようなもんさ！絶対漣もね、百之助君が元気でいてくれるのが１番だって思ってるだろうからさ」
「…、ハハッ…少しは煙草も控えるか」
「あぁ〜煙草ねぇ、百害有って一利無しだよあんなの、…って、初音にいい笑顔で叱られてさぁ…禁煙頑張ったんだよねぇ。子供だって産まれるのに馬鹿ですか貴方はーって。おかげ様で今はもう辞められてるんだけどねぇ」
「ハハハ…」
「――まぁそういう訳だからさ。漣と、百之助君の人生なんだ。お互いの人生だったのが、その内２人で１つの人生にもなるんだから。あんまり気負いせずにね、元気でいて、幸せになってくれれば、僕ら親としてもそれで十分だから」

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