zugzwang(ツークツワンク):動きたくないが動かざるを得ない局面


転校したら逆ハー悪女から敵認定されて色々勘違いや擦れ違いが起きるorトリップしてしまった先で初っ端から巻き込まれてその後も巻き込まれまくるorその他そういう系統で長編みたいな。或いは転校した先で虐めが起きていて面倒は御免だったんだけどあんまりにも酷いので仕方無く助ける話とか。




哀しきかな。彼女の経歴は産まれた頃からの全てが確かに存在しているようだし、だけども私のそれと言えば唐突に現れたもので、以前という以前がいっそ気持ちのいい程に何も無い。気味の悪すぎる事である。だがしかし、一体どうしろと。私の身に起きたそれは私の意など一切介さないもので、お前は何なんだ、と訊ねられても、"この世界"に関しては如何とも答えられやしないのだ。そうして黙り込んだなら、そら見ろと言わんばかりに嫌悪と不快の混じり合った目を更に向けてくる。これ、私泣いてもいいよね!

「――で、それで?」
「…、…え、」
「俺にとっちゃあ、お前が心から笑ってくれずにいる事の方がよっぽど大事で、どうにかならねぇもんかと思ってる訳だが」
「、っあ、」
「まぁ、まずは…泣かせる方が先みてぇだな」
ぐ、と腕を引かれ、抱き込まれた。ふわりと、爽やかな香り、脳に馴染み始めた彼のフレグランス。そしてぶわりと熱が、頭の後ろと腰に触れる。髪を巻き込んで、私を胸元に押し付ける手はひどく優しくて、強い。あ、と思った――それが境目だった。染みを作ってしまう、のに。いいのか。言葉に出来ないものが身体を駆け回る。陥落だ、降参だ。そうして背中へ手を遣った。
お前は此処に居るだろう、と。嗚呼なんてずるいひと。どうしてそんなに、柔らかに、穏やかに、言うの。





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