気づけば毎日忙しい忙しいばかりで心も体も休まる時を知らなかったように思う。暗殺という仕事には決まった休日もなければ決まった時間に仕事が終わるわけでもない。言ってしまえばいい加減な仕事なのかもしれない。
だから休日が合うことなんて滅多にないし、無理にでも作らなければならなかった。あたしは女だからという理由でわりと簡単に休日をもらえたのだが問題は彼の方で。普段からドカス呼ばわりの上、仮にも隊長なのだがそうは思っていないであろう態度のボスは休みがほしいと言った途端キレたらしい。その場にいなくて正解だったと言われたほどだから相当ひどかったんだと思う。かわいそうにスクアーロ…。
でもおかげで2人一緒の休日が取れたからこうして旅行に来ることができたんだ。ボスから受けた仕打ちも報われるよきっと。

「うあー…最高に気持ちいいー。スクアーロありがとう」
「そういや2人で泊まりの旅なんて初めてだったなぁ」
「んー。初めて初めて」

イタリアから離れて少し遠出したあたし達は今、プチ旅行を満喫中だ。
日が暮れた頃から外にある広いバスタブにお湯をはってたくさんの花びらを浮かべ、2人でのんびりゆったり過ごしている。

「誰も邪魔する人がいないっていいね。最高だよ」
「案外ついて来て覗き見でもしてたりしてなぁ」
「…やめてよ。ティアラ乗っけてる奴とかいかにもやりそうだし」
「ここでナイフが飛んできたらシャレなんねぇぞぉ」
「だからやめてってば。本当に起こりそうで恐いよ」
「……」
「……」

しばしの沈黙が続いてお互いに顔を見合わせる。冗談で言ってはみるがヴァリアーの幹部が1人でも出て来たら笑えない出来事だ。なんのために行き先を告げず遠出して来たのかわからなくなる。

「ないない。ここにはあたし達2人しかいないよ」
「そうだなぁ。いるはずねぇ」

まるで言い聞かせるようにしてこの話は終わりにした。スクアーロから目を離せば夕日は大分傾いてもう少ししたら夜がやってくる。

「すっごいねぇ。太陽が水平線に沈むの見れちゃうなんて思わなかったなぁ」
「あぁ。ここに来ねぇ限りは見れねぇだろうなぁ」
「そろそろ上がろっか。カジノとかある店に行ってみたいな!」
「まさかお前がやるのかぁ?負けが目に見えてるぞぉ」
「そんなことないよ」

やり方さえ覚えれば勝てるだろうという自信はあるしカジノの他にも行ってみたいところはたくさんある。ここにいる間は暗殺者ということは忘れてめいっぱいに楽しむと決めたんだ。
あたし達の夜はまだまだこれから。



夕陽はバスタブに沈む

企画/santamonica様提出
120520

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