××デート | ナノ

××デート



今日、家にリヒトがくる。
今まで何度も何度も断られてきたけど、やっと良い返事がもらえた。
昨日は掃除で忙しかった。でも、それすらも今日のためだと思えば楽しかった。
早くリヒト来ないかな。まだかなぁ。
玄関で待ちぼうけのオレ。時々覗き穴を覗いても、まだリヒトの姿は見えない。
ここも掃除したからピカピカだ。砂埃一つ落ちてやしない。
リヒトの為におやつもたくさん作ったし、興味を引きそうなサッカーのDVDも借りてきた。
喜ぶだろうな。普段とのギャップにびっくりするだろうな。
驚くリヒトの顔を想像すると頬が緩んでしまう。あぁ楽しみだなぁ。

――ピンポーン

高い機械音が来訪者を知らせる。誰か、とか確認せずに躊躇いもなくドアを開ける。
目の前には早速びっくりした顔のリヒトが立っていた。

「いらっしゃい、リヒト」
「……お邪魔します」

礼儀正しく断りを入れて家に上がるリヒト。
練習後なのか、肩にはでかいスポーツバッグをかけている。

「リヒト、入りたかったらお風呂貸すよ。お湯も張っといてるし」
「いらねぇ」

ぶっきらぼうなリヒトは、子供か田舎者みたいにきょろきょろと家中を見渡している。
「オレの部屋は二階だよ」と教えると、階段に足を向けた。
その後ろを付いていく。

「リヒト。オレ、色んなの用意したんだよ」
「色んなの?」

階段を昇る足が止まった。直ぐ下には俺がいるからUターンは出来ないはずだ。
別に変なことをする気もないけど。

「おやつとか、サッカーのDVDとか。リヒトが好きそうなものだよ。折角来たんだから、今日は二人きりで楽しく過ごそうと思うんだ」

もうすっかり慣れた嫌疑の視線がオレに刺さる。
少しして諦めがついたのか、リヒトは再び階段を昇り始めた。

「右の部屋だよ」

わかりやすいようにドアを開けたままの部屋へと誘導する。
オレの部屋に着くと、リヒトはまたきょろきょろし出す。
そして直ぐにDVDを見つけて手に取ると、次は多分DVDレコーダーを探し始めた。

「すぐ観る? じゃあ貸して」
「あぁ」

素直にDVDを渡してくるリヒト。
気になっていたものなのか、心持ち表情がワクワクしている。
DVDをセットして、さり気なくリヒトの隣に座っても、リヒトは何も言わなかった。
オレの作ったおやつにも既製品だと思っているのか、勧めると遠慮なく手を伸ばしている。
今日はいい一日になりそうだ。
今なら平気そう、と熱中するリヒトの手にそっと小指だけ触れながらそう思った。






ま、全部妄想なんDeathけど。


2011/06/01