なんだなんだ、俺は騙されていたということか?アレルヤの人畜無害そうな雰囲気に麻痺して本髄が見えていなかったってのか?いちいち覚えてないってお前それ不特定多数の男と夜な夜ないやらしい事をしてるって事なのか?アレルヤって実は意外に不埒な人間なんじゃ?いやでもこの目の前にいるアレルヤを見てみろよ、全然男と寝てるような顔じゃねえだろ。むしろ童貞ですって感じが全面に出てるだろ。ていうかよくあんなことを平気で言えたなアレルヤ。ゲイがばれたらもうなにもかもばらしてしまえってやつか。知りたかったけどいくら何でも。
「やっぱり嫌だよ…ね…?ニール」
まるで死ぬ前の走馬灯のような速さで思考を巡らせていたニールは、アレルヤの不安そうな声で現実に引き戻された。
「ア、アレルヤ」
肯定も否定もできなかった。落ち着け…別に動揺する必要はないだろう。 俺の弟だって二日に一回やるような奴だし、対象の性別が違えどやってることは一緒だ。差別は駄目だ。
「でも…僕はニールにだから言ってるんだ。もうぎくしゃくしたくないし……」
「ああ…」
無意識にビールを口元に持っていくが、うまく飲めずかちりと歯にぶつかった。どうすればいいのだろうか。
「アレルヤ…もしかしてお前俺と一緒になった後も他の奴と寝てたんじゃ……」
かなりの割合で男と寝ているらしい、だったら我慢できずに他の知らない男を頼みにしてしまっていてもおかしくない。まず男同士ってどうやるんだ。
「そんなことしないよ!」
アレルヤはきゅっと目をつむってぶんぶんと必死に頭を横に振った。そぶりが可愛すぎるぞ畜生。わざとか。
「できるわけないよ。こんなにニールにお世話になりっぱなしなのに」
「俺に世話かけてるかどうかは性欲とは関係ないだろ……」
「せ、性欲って…そんな明け透けに」
「でもそうだろ。普段高確率でやってたんなら、俺と付き合い始めてからはどうしてたんだ?」
追い詰めるようにしながら聞いた。酒の韻がもう冷めてしまっていて、俺の脳もやけにすっかり醒めている。冬の夜なのに全然寒くなくて身震いした。アレルヤは顔を真っ赤にして俯いている。
「質問ばっかり」
「俺はアレルヤの事知りたいんだからな。これだって大事なことだろ」
我ながら押し付けがましい言い分だ。
「………うん」
「気なんか使わなくて」
「じゃ、じゃあ言うよ」
これ以上この会話が伸びれば伸びるほどどんどん恥ずかしくなると思ったらしく、アレルヤはなかば俺の言葉を打ち切って言った。
「ず、ずっと、ってわけじゃないけど…どうしても我慢できなかったら…自分でしてたよ。仕方ないし……その」
やっぱり自慰してたってわけか。まあ他の男と会われるより全然ましだ。俺はその返答で満足したが、アレルヤはまだなにか言い足そうな様子を見せているから最後まで聞いてやろうと促した。
「なんだ?」
俺の言葉に後押しされたのか、アレルヤは銀色の今にも崩壊しそうな瞳をこっちに向ける。細くて整った眉を下げ、唇をふるふると震えさせて何かを訴えるように見つめてきた。どきりと胸が騒ぐ。待てよ、アレルヤってこんなに可愛かったっけ?酒が入ってるから赤いのか、恥ずかしいから赤いのか、計算ずくめで赤いのか。いずれにしてもいつもの何倍もの魅力を放っていることには変わりない。俺の考えを知ってか知らずか、アレルヤは蚊の鳴くような声でぽちりと呟いた。
「ちゃんと、ニールのことを考えながらしたから…!だからいいよね…?」
「は………?」
「僕が考えてるのはあなただけなんだよ。でもお願いだから、ね、ニール、気持ち悪いだなんて思わないで…」




あ、わかった。俺はこの台詞を聞いて唐突に理解した。アレルヤが可愛いそぶりをしてるんじゃない。アレルヤのやること全部が可愛いんだ。だから、俺がたった今この愛しいアレルヤのために一肌脱いでやろうと決心して、腹を括って押し倒したのも当然のことなんだ。アレルヤが嬉しいと思うことをしてやりたい。アレルヤのもっと色んな姿が見たい。そう思って、俺は持っていた飲みかけのビールを一気に口に流し込むと、グラスを適当に放り出して、アレルヤに色んな意味で酔いそうなキスをした。





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