流れはこの前とほとんど一緒だった。最後のお客さんが銭湯を去り、アレルヤが浴場で疲れを癒している間にニールが簡単に片付けをしてくれる。今日もアレルヤはニールに「しなくていい」と言ったが、まるで聞く耳を持たなかったので半ば諦めたまま浴槽に浸かった。ほとんど一緒だとはいっても、この前と違うところがひとつある。それはニールの家に行くということだった。どうしよう、こんな不安定なままでは自分が何をしてしまうか分からない。なんとなく髪の毛はつけたくなくて少し上で結わえておき、浴槽に鼻ぎりぎりまで浸かりながらアレルヤはただ悶々と考えていた。確かに最近自分がおかしい。おかしい原因が分かっていながらもなんの処置もとることができない。とるとすれば、ニールにいちかばちか告白してすっきりするという手段しかない。そ、そんなのできるわけがないじゃないか!断られるに決まっている。勝手に妄想して頭に熱がのぼってきた。駄目だ落ち着け。早くニールとお酒が飲みたくて出たいという気持ちと、この後の展開がまったく分からずにいっそ出たくないという気持ちが交錯していて頭がおかしくなりそうだ。しかしそうはいってもこんなところでいつまでもぼーっとしてニールを待たせておくわけにはいかない。仕方なくよろよろと上がって、体を拭きに脱衣所へ戻った。
さっさと着替えて、片付けをしていたニールに御礼を言い、一緒に銭湯を出た。はんてんはいつも銭湯に置いてきているが、取りに行って着てこようかというくらいに外は寒くて軽く身震いする。しかしその分空気が澄んでいるのでこの前と同じように空を見上げながら、一歩先を行くニールについて歩き始めた。
「…冬は星がよく見えるね」
「そうだな、アレルヤは星が好きなのか?前もそうやって見てたけど」
「み、見てたんですか」
思わぬところまで見られているようだ。アレルヤもちらりとニールを見た。ニールはアレルヤとは逆に地面を見ながら吐く息を震わせている。白い息が風にのってふわりと後ろへ流れていった。
「ああ。話しながらずっと上見てた」
「す、すいません」
「謝んなって。なんか俺が悪いことしてるみたいじゃねえか」
「で、でも別に話をおろそかに聞いてたわけじゃないんですよ!」
「はは、分かってるって」
ぼちぼち会話をしているうちに、ニールがふと止まった。アレルヤは自分が今さっきまでどこを歩いているのかなんて全く気にしていなかったから、というより気にする余裕がなかったから、ここが何処なのか、銭湯からどうやってきたのか分からなかった。ただ彼が止まったからつい足を止めただけだ。
「ついたぜ、ここだ」
ニールの住んでいる家は、予想に反して少し小さかった。小さいといっても、一人暮らしをする分にはちょうどいい広さというところだろうか。鍵を家のポストから取り出して開け、先に入り明かりをつけてアレルヤに中に入るよう示した。
「狭いけどまあ入ってくれ」
言葉に甘えて中に入ってみた。ニールはアレルヤの家がきれいだと言っていたが、ニールの家だって負けないくらい掃除されている。
「きれいじゃないですか。僕の家とほとんど変わらないし」
「片付けたんだって。いつもは結構物が散らかってるけど今日はアレルヤが来るって分かってたからな」
ということは、僕が来ることももう予想済みだったのか。断らないと思っていたのだろう。アレルヤは少し笑ってニールが入った部屋に続いた。






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