アレルヤは固まった。彼は一体どういうつもりなのだろうか。体がまだ近い。どきどきする。最初はあんな遠くから見つめるだけだったのに、たった二週間でここまで近付くなんて。風呂上がりの良い匂いがするな…と場違いな事を考えながら、目の前の彼を見つめた。
「アレルヤは酒とか飲めるか?」
「えっ?まあ飲めますけど」
飲めるといっても、まずそこまで飲んだことがないから分からない。酒や煙草とはあんまり付き合いがないのだ。
「じゃあ仕事が終わったら飲もうぜ、アレルヤん家で。酒は買ってるからさ」
つまり彼は僕の家で飲み会をしたいらしい。どうしてそんなことを思ったのだろう。そんなに淋しく見えるのだろうか。
「良いですけど、なんでいきなり…」
アレルヤの頷きを見て安心したのか、ニールは番台から離れた。
「よかった。実は今日、夜から友達の所で家飲みする予定だったんだ。でも相手に急な用事ができて駄目になっちまってさ。酒だけ残ったし、俺は飲む気満々だったから誰かいねーかなって思って」
「そうだったんですか。僕は全然構いませんけど、まだ仕事が終わってないし、僕もお風呂に入りたいから待ってもらわなきゃいけないんですけど」
「大丈夫大丈夫。ていうかアレルヤが風呂に入ってる時にでも手伝うぜ、仕事」
そんなことしてもらうのは申し訳ないが、逆にじっとされているのも気を遣うので「じゃあお願いしますね」と言っておいた。ニールは「任せろって。じゃあ風呂入るときには声かけてくれよ」と言い、休憩所の方へ歩いていった。





急展開だ。どきどきする。まだ二週間しか経っていないのに、もう一緒に飲めるくらいの友達として見てくれるなんて。アレルヤは嬉しさに顔をほころばせながら仕事に戻った。職業上、同年代の友達が出来たとしても一緒に遊ぶほどまでには親しくならないため、嬉しさもひとしおだ。作業する手も浮き立つ。部屋をきちんと片付けておけばよかったなあと心配したが、しかしお泊りという言葉がちょっと気にかかった。泊まる事自体は構わない。布団は二つあるしスペースもそれなりにある。一番心配だったのは自分の自制心だった。酔った勢いで彼を襲ってしまったりしてしまわないだろうか。意外にも酔って甘えてきたりして、彼が隣に居るのに我慢できなくなったら………いやいや何を考えてるんだ僕は!絶対そんなことは駄目だ!馬鹿みたいだ。彼は友達なんだ。ハッテン場にいるただその場限りで身を任せるような人とは違うんだから!僕は最悪だ!
アレルヤはぶんぶんと頭を振り、次々と現れる妄想を断ち切って目の前にある帳簿に無理やり神経を集中させた。





第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -