アレルヤは今日も朝の8時に起床した。窓から溢れるように射す柔らかい太陽の日差しが、まだ瞼を開けきれていないアレルヤの視界を白くする。むくりと起き、温かい布団を退けた。軽く欠伸をしてから、冷え切った部屋の空気を体で感じるように伸びをすると、声にもならない声が鼻から漏れた。まだ目があまり開かない。今日はまた一段と冷え込んでいるらしく、長袖を着てもまだ寒かった。最近やっと涼しくなったと思ったらもうこれだもんなあ…とアレルヤは独りごちて、寝ぼけまなこのまま、のそのそと布団を片付けた。



着替えて顔と手を洗った後、明るい橙色のはんてんを着て台所に立ち、朝ご飯と昼のためのおにぎりを三つ作った。今日の朝食は麦ごはんとサバの塩焼き、そしてナスと挽き肉の甘辛煮とお味噌汁、熱いお茶も忘れずに。朝にしては多い。しかし番台の仕事は真夜中に終わるので夕食がとれないし、夜中の食事は体に悪い。だから朝のうちにゆっくり多めに食べておき、昼は暇な時におにぎりでお腹を満たす。番台を始めてから最初のうちは体のサイクルが狂いっぱなしで大変だったが、今ではもうすっかり慣れてしまった。仕事上規則正しい生活のおかげで心身共に生き生きと過ごせているし、今の生活に満足している。アレルヤは銭湯から少し歩いたところにある借家を借りて一人で生活していた。




サバの塩焼きをつつきながら、今日は土曜日だから回覧板を回さなきゃ、とぼんやり思った。そういえば最近、回覧板の住民一覧表に知らない名前が載ってたな……だれだったっけ、よく分からないけど最近この通りに引っ越してきたのかな、うちの銭湯に顔を出したことはないはずだから。大体ここら辺の人達は皆来てくれてるし、その人も来てくれるかなあ。
あれこれ想像しながら残さず食べ終えたらすぐに食器を洗い、最近流行りだしたまほうびんの水筒に温かいお茶を注いで蓋を閉める。それとおにぎりと回覧板とを鞄に詰めて、戸締まり確認をしてから外に出た。澄み切った空気がアレルヤをすぐさま包む。息をするたんびに体中に染み渡って気持ちがいい。寒くてもこの感覚は大好きだ、今日も一日がんばろうという気がしてくるから。雀が木製の電信柱に座ってちゅんちゅんと鳴いているのが可愛くて思わず上を見上げると、眩しい朝の日差しが目に入って思わずくしゃみした。








※回覧板…田舎の町では回覧板という厚紙でできたファイルみたいなものが住民に回されていて、町の行事などの予定や住民一覧表みたいなものが記してあります。これはどこにでもあるのかなあ…?私の町にはあります。


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