「エゴイスティックの塊」続き
※R18









鈍い椅子の軋む音が広くない準備室に響く。一人分の体重を乗せることしか計算されていない古椅子は過度な重力の波に不満そうな声を出した。どっしりと跨がっている不良生徒は決して自分より体格が劣っているわけではない。膝に向かい合わせで乗り上げ、身体が求めるままに動く自分勝手なハレルヤがずり落ちないように時々腰を押さえてやりながら、そうか、この感覚もこれで最期か、なんて気の抜けたことを考えた。この膝への負担の感覚だけじゃない、このかたくてごつい腰も、香水と汗が混じり合ったきつい匂いも、歪んでも綺麗な雄の顔も、これら全てを間近に感じられるのはきっとこれが最期なのだろう。体温を直にこうやって寄せ合うのも。ライルが意地悪するように軽く揺すってやると、尻に深々と突き刺さったペニスが良いところに当たったのだろうか、ハレルヤはぶるりと身を縮めるように身体を震わせた。息が首筋にかかる。熱いな。熱くて若い、こいつはまだ熟れていない可能性を秘めた未成人だ。俺なんかと全然違う。違うから良いんだけどな。ふと気がつけば、外から聞こえてきていた授業の喚き声がいつの間にか消えていた。それすらも気づかないくらい目の前の人間に注意を寄せていたことが自分の中であらわになったのを薄く笑いながら、すぐ傍にある生徒の耳をべろりと舐めた。また震える、その振動が股間に直接響いて気持ちよくて、長い前髪の束に隠れようとしたいたいけなそれをもう一度舐めた。
「う、あ……」
きついからなのか、それとも善がっているからなのか、ハレルヤは息に紛れて吐き出したようなうめき声を漏らした。
「やっぱ耳、きもちいんだ」
「ちが」
「違わないし、前より締まってるし」
つまらない嘘なんてついたらお前の好きなとこ突いてやんないぜ、と、きもちよくないらしい耳元でわざと言い放つ。するとハレルヤはふん、と鼻を鳴らして、いい気になんな糞が、と高飛車に返した。他人に寄り掛かったままそんな台詞を吐ける人間なんて早々居ない。そういう奴だとは分かっているが、ここで大人しく引き下がるほどライルは素直な人間ではなかった。口端を釣り上げて、腰にまわしていた手の力を強める。
「ってえ」
「お前さぁ、最期くらい可愛く鳴いてやろうとか、そういうサービスはないわけ」
「知るか」
女顔負けの締め付けを繰り返しながら、早くしろと言わんばかりに身体を押し付けるハレルヤ。首に巻き付けられた両腕が首を圧迫する。どこまでも締められてしまいそうだ。いつもより力が強いのを感じないわけが無い。半分程脱ぎかけの、ハレルヤの黒いズボンがまた少しずり下がる音がした。
「知るかって……お前な、」
「いいからやれよ、いつもみてぇに」
下から、と低く誘うように言われてしまってはもう従うしかない。ライルは動くのも許さないくらいきつく覆っているハレルヤの中を、憤ったペニスで肉壁をこそぐようにゆっくりと振動させた。軽く息を鼻から漏らして少しでも快感を拾おうと腰をずらしたりする、そんな淫乱なそぶりを見せている腕の中の生徒が、学校内どころか地域間でも名高いあの不良生徒なんだと思うと、またあの背徳感と満足感が一気に押し寄せて心を十二分に満たした。他人に喝を鳴らして威嚇する奴が、今こうやって俺に抱かれに来ている。しかも好意からじゃなくて、ただの賄賂の対価として身体を捧げている。
「あー…まじ、きもちいね、お前」
「っ…くそ、ったれ、が」
うっかりと卑猥な声を出さないように歯を食いしばりつつ、それでも反抗しようと必死に言葉を紡ぐ。俺からすれば、口を開けばあんあん鳴くようなAVの女達よりもこっちの方が何倍もそそる。別に俺はゲイじゃないが、こいつはそういった奴らの中でもセックスが上手い方なんじゃないだろうか。もちろんあくまでも想定の域は出ない。
「う、も…っと、やれ」
はいはい。これじゃあどっちが上の立場なのか分かったもんじゃない。腹筋の力を十分に借りて、相手のお望み通りに強く腰を振ってやる。肌がぶつかるリアルな音と、繋がっているところからの先走りと腸液の混ざった音がいやらしく響いて、それがハレルヤの鼓膜を刺激して興奮させたのか、締まりが一段と良くなった。二人が同時に身を引き攣らせた。ライルら思わず息を詰まらせ、なおもハレルヤを犯しつづけた。首に絡まっていた腕から少し力が抜けた。力が入らなくなったらしい。太くて固いライルの肉棒が、徐々に凄まじい速さで快感に煽られているハレルヤのむっちりと若々しく張った臀部を出入りする。ハレルヤの熱い体温と摩擦から生まれる熱のせいで二人の中の温度の境目が無くなった。首筋にもぞりと顔を押しつけられて、そこから吐かれる息でさえ火傷しそうなくらいに熱い。
「っあ…すげえ、絡み付いてる」
「っ、っあ……」
「えろいな、ハレルヤ」
「っ……」
限界が段々近づいてきたようだ。頂上に待つ最高の一瞬のために、ハレルヤがじきに言葉を発しなくなった。あ、とかう、とか声にもならない音を高めに出しながら、ライルの上にまたがってひたすら喘ぐ。
「そろそろいく?」
「ん、ん……っ、」
優しく聞いてやると、ハレルヤのもぐり込んだ頭が僅かに縦に頷いた。快感を受け入れるだけで精一杯のようだ。苦笑して、了解、とライルが腰を小刻みに揺すり、ハレルヤの鍛えられた腰を両手でひきあげた。脈を打つペニスの先端が抜けるか抜けないか、くらいにまで引き抜き、そこから一気に腰を落としてやると、ハレルヤはライルにしがみつき、一度も触れられていないまま限界まで勃起したペニスで勢いよく射精した。








泰然たる反抗
(選択する余地も与えない)



※続きます





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