僕がニールにいつも何をあげているのかを結局教えないまま、ニールは僕の唇に唇を重ね合わせた。ゆっくりと動く舌が幾度も僕の下唇を撫で回して、徐々に口の中に入って来る。僕は一切抵抗しなかった。太くて粘着質なニールの舌に自分の舌を絡めあわせて、何度も角度を変えてはひたすら貪る。ニールの右手が僕の身体からはんてんを脱がして、長袖の洋服のボタンを左手でいとも簡単に外す。ああ、利き腕でもないのに本当に器用な指先だ。滑らかな動きで上の服を脱がせると、口づけを堪能したニールが舌を這わせたまま下へ下へと頭をさげてゆき、アレルヤの胸元の乳首にかぷりと食らいついた。
｢っあ……｣
｢なに、もう気持ちいい？｣
紅く熟れる小さな粒を潰すように歯で噛みながら、先端をちろちろと擦ってやる。アレルヤのお気に入りのやり方で、わずかに快感に届くくらいのもどかしい気持ち良さを中途半端に与えてやると、アレルヤは抵抗するどころかニールの頭を胸元にやんわりと押し付ける。片方しか弄ってもらえないむず痒さから、ニールの手を自ら掴んでもう片方の乳首へと押し当てた。
｢にーる、ね、こっちも……｣
蚊の泣くような小さな声で媚びる。先程の態度は一体なんだったのかと思うくらい、あっという間に飲み込まれていく。ニールが仕向けられた手の指にたっぷりと唾液を絡ませてもう一方の乳首も愛撫してやると、恥ずかしそうに目を細めながらも甘い疼きを享受した。そうしている内にも、ニールは腰をアレルヤの下半身にいやらしく押し付けはじめる。ズボン越しでもはっきり分かるくらいにまで硬く張り詰めだしたそこをわざとらしく感じ取らせて、それがますますアレルヤの興奮を煽った。乳首はもうそれ以上刺激したらどうにかなってしまうんじゃないかというくらいに真っ赤に腫れ上がり、それを見てにやりと笑ったニールは唐突にそこを爪でぐりぐりと刺した。
｢や、ぃたい…｣
｢痛い？でもお前の、だんだん硬くなってきてないか？｣
ニールが腰を浮かしてアレルヤに己の下半身を見せ付けてやる。アレルヤの性器は、あまり分厚くないズボンの生地をいつの間にか先走りで少し濡らしていた。そこを間接的に指で触ってやると、アレルヤの腰はびくびくと面白いくらいに跳ね上がった。
｢あ……｣
｢ここ、大分きつそうだな。脱がしてやろうか？｣
ニールがいやらしく耳元で囁くのにすら敏感に反応し、ぞくぞくと背中に感覚が走る。ベルトをかちゃかちゃと響かせて外したあと、いよいよ下着姿になってしまったアレルヤを見て低く笑った。
｢やらしいな、アレルヤ。まだほとんど触ってないのに、もうこんなに勃たせてるぜ｣
｢や、ニール…恥ずかしいよ｣
｢なあ、くわえてほしくないか？｣
ここ、と手をアレルヤの性器に宛がって、優しく撫でてやる。アレルヤの反応とは裏腹に、そこはニールのと同じくらいに起き上がっている。くわえる、という単語にすら卑猥さを感じて、アレルヤはもうたまらずに首を縦に振った。はやく気持ち良くなりたい、その一心だ。ニールはアレルヤの下半身が纏う下着姿を引き下げ、挿入しなれていない赤いペニスをあらわにした。前は抵抗感が若干否めなかったが、今ではこれがあの可愛いアレルヤについているものだというだけで恐ろしいくらいに惹かれてしまう。ニールは身体をずり下げて、アレルヤのペニスを口いっぱいに頬張った。
｢うあ、ゃ…、あ……｣
舌をまんべんなく巻き付けて、頭を上下に動かしてアレルヤのペニスを刺激する。亀頭の出っ張ったところを丹念に舐め上げ、先端の穴をすぼめた舌でくちゅくちゅと弄る。我慢できなかった先走りを次々と滴らせながら、アレルヤのペニスは射精したそうにびくびくと揺れた。
｢だめだよ、ぁ、でちゃう……っ｣
アレルヤを顔を真っ赤に染めて、でる、でる、とうわごとのように繰り返す。しかしニールは決して愛撫の速度をゆるめなかった。それどころかどんどんスピードを上げつづけ、アレルヤはとうとう我慢が出来なくなった。限界に達する。
｢や、でる、でる……っ｣
大きな鳴き声を上げてアレルヤは達した。びゅく、と濃い精液が先端から噴き出し、そのままニールの咥内へと飲み込まれていく。はあ、とわずかに息を荒げながら、アレルヤはニールの頭を掻き撫でた。ニールの口から滴り落ちる精液が自分のもの。それだけで、アレルヤは下が疼くのを感じた。だめだ、やっぱり堪えられないのか。
｢ご、ごめ……｣
｢だいじょうぶ、随分溜めてたな。すっきりしたろ？｣
｢うん…でも、ニールのも、舐めようか？｣
舌足らずなアレルヤ物言いに、ニールは思わずお願いしそうになったが、ここはなけなしの理性でぐっととどまることに成功した。ニールは口の中に残っている精液を手に出して、アレルヤの下の蕾に擦り付けた。ずくりと熱をそこに溜めた蕾が嬉しがるようにニールの指ほしさにうねるのが自分でもよく分かる。
｢ぁ………、ん｣
｢どっちかっつーと、俺のはこっちでくわえてほしいんだけど…いいか？｣
アレルヤは恥ずかしさからなのか快感からなのかわからない涙を溜めながらこくりと頷き、答える代わりに、力の抜けた下半身を腕で広げ、脚をゆっくりと広げた。恋人の醜態に、ニールの喉が鳴る。
｢ニール、｣
掠れた声がニールを甘ったるく誘う。
｢それやばいって、アレルヤ……｣
アレルヤの腰を両手で優しく支え、ニールは自分のペニスを蕾へと押し当てた。赤黒い性器と、先走りのせいで純粋に赤くてらう秘孔の色彩はもはやニールの欲を煽り立てる以外の何物でもなかった。
｢挿れるぞ、アレルヤ｣
ぐぐ、と体重をかけてアレルヤのなかにペニスを差し込んだ。殆ど慣らしていないアレルヤの中は最高に締め付けがいい。ずるずると美味しそうにペニスを飲み込むアレルヤは、その質量感にひくりと喉を震わせた。
｢あ、ぅ………｣
一番太い所までペニスをいれられ、ニールがあまりに強い締めに思わず顔を歪ませた。アレルヤはその表情を見ただけでますます興奮し、中をぎゅっと押さえ付けた。
｢うあ、もう、もう無理。動くからな、アレルヤ｣
ニールはずるりと引き抜き、あと少しで抜け落ちるところでまた挿れ込む、という動作をゆっくりと繰り返した。肉壁が寸分の休みもなくひくひくと動いて、堪えずニールのペニスを追い詰める。圧倒的に迫り来る射精感をなんとか我慢して、徐々に腰の動きを早めていく。
｢あっ…あ、い、｣
｢気持ち良くなってきたか……？｣
｢きもちい、いい、よ、にーるっ｣
筋肉の収縮がスムーズになって、ニールのペニスを気持ち良く引き入れることを覚えたアレルヤは、腰を揺らめかせながら快感を拾ってゆくことに必死だ。ニールは淫乱な自分の恋人の髪の毛を撫でながら、片方の手で腰を動かしつつ、最後の追い込みだといわんばかりにピストンを開始した。腰の筋肉を最大限に利用して、ぱちん、と肌同士が響き合うくらいに激しく腰を打ち付ける。
｢あああっ、あっ、や、ぁあっ｣
アレルヤが高く鳴きながら、首を振り、内に篭る快楽の出口を求める。
｢なあ、アレルヤ…｣
ニールはアレルヤに覆いかさぶるように身体を倒して、耳元に顔を近づける。腰だけは別の生き物みたいに動かしたまま、アレルヤの髪の毛を払って顔の輪郭を愛おしむように撫でた。涙の跡が見える。
｢ひ、ぁっあっ、っ……｣
｢覚えてるか？お前がいつも俺にくれるやつが何なのか、ってやつ……、っ｣
｢うぁぁ…あっ、あ｣
｢流石に恥ずかしいからさ、こんなときにしか言えねえけど、｣
濡れた唇を耳梁にめいっぱい寄せて、荒々しい息と共にニールはアレルヤに囁いた。
｢あれ、愛だぜ、アレルヤ、｣
ニールがそう言った瞬間、アレルヤはとびきり高い嬌声を上げた後、精液をほとばしらせ、二回目の絶頂を迎えた。






結局アレルヤにあの言葉が伝わったのかどうかは分からない。アレルヤは散々鳴いた後、何も言うことなく意識をぷつりと落としてしまったからだ。まあよくあることだから特に起こそうとも思わない。お互い裸のまま、純粋無垢そうな寝顔を見せるアレルヤを目の前で見つめながら、まあいっか、とニールはひとりごちた。お前が分かってなくても、俺が貰ってることには変わりないのだ。カチッとどこからか時計の音がして、年が明けたことをニールに知らせた。気絶した恋人と年越しかよ。随分と変な新年もあるもんだな、と苦笑いしながら、ニールはアレルヤを腕に抱きしめ、瞼を閉じた。







見えないもの
(それは見えるものよりも美しく)