捏造甚だしいですが、私の所の風介と士郎の関係はこういう設定です
風介の過去を捏造。
アツヤが生存してます。
これを基本設定としています
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私は母子家庭だった。父親は知らない。母さんも誰か分からない、と言っていた。随分な数の男と寝たそうだ。四歳の私にはよく分からない話だったが、父親かもしれない男が大勢居る、ということだった。「私に似ているから、誰でもいいでしょ?」と母さんは笑っていた。
生活費は母さんが男と寝て、その人から貢がせることで賄っていた。綺麗な母だったので、相手は掃いて捨てる程いたのだろう。
尻が軽い母だったのは確かだが、さばさばとした母さんが私は好きだった。母さんもそれなりに愛情を注いでくれていた。
一般とは違うが、私は幸せだったのだ。あの日までは。
私達は北海道に住んでいた。その日、私は母さんの運転する車の中にいた。
山道を通っている時だ。突然、ゴゴゴゴと大きな音がして、視界は白に染まった。雪崩だ。最後に母さんが私の名を呼んだ気がするが確かではない。私の意識は闇に落ちた。
目が覚めると、私は雪に埋もれていた。雪は白い筈なのに視界に光が無いので、暗い闇の中にいるようだった。雪が私の体をどんどん冷たくしていく。雪の中で私はこの人生の中で一番恐ろしいのは、この凍てつく闇だろう、と思った。
次に目が覚めると、私は病院にいた。偶然にも救出されたのだ。医師は私に雪がスポンジの様に私の体を包んだお陰で助かったのだ、と言っていた。命を奪おうとしたのも雪で救ったのも雪。皮肉だな、と子供心に思った。
母さんは亡くなっていた。遺体が発見されたそうだ。大きな喪失感で私は口が利けなくなった。母の存在は私の中でとても大きかったのだ。
私の隣のベッドに、この雪崩に巻き込まれたもう一人の少年がいた。吹雪士郎と言うらしい。彼も家族を失ったそうだ。唯一、弟の遺体は見つかっていないのだが、生存の可能性は極めて薄いだろう。
大人は勝手に可哀想、等の言葉を寄越してきたが、無意味過ぎて笑えた。この傷を分かち合える筈がない。
その点で、私達は仲良くなれた。似たような傷を背負った者同士通じる物があった。
最初は口が利けなかったので、筆談をした。その後、少しずつ声が出る様になって、普通に会話出来る様になった
「涼野君、何食べるの?」
「…プリン。」
「甘い物好きなの?僕もなんだ」
「…そうか…!同志だ…ね…」
「どうし…?」
「同じ好みだとか…そういう…意味だ…よ」
「へぇ…!涼野君物知りだね」
身体の傷は癒えたが、心の方はそうは行かず、長い間私達は病院に居た様に思う。
士郎と仲良くなり、まるで普通の
親友の様な情を持った時、驚くべき知らせが来た。
士郎の弟、アツヤが生きていたのだ。
雪崩で寸断された道路の私達とは逆方向の町の病院にいるとの事だった。誰が雪崩に巻き込まれたのかの情報が無く、アツヤの意識がはっきりとするまでアツヤが誰なのか分からなかったらしい。
「アツヤが、生きてる…?」
「そうだよ、士郎。君の弟は生きてるんだ!」
「本当?…うっ、ひっく…うう…風介えどうしよう嬉しい、涙止まらないよぉ…!」
「いっぱい泣いていいんだよ。」
私は本当に嬉しかった。士郎と一緒に跳ね回って喜んだ。
士郎はアツヤと共に親戚に引き取られる事になった。粗方傷が癒えたのだ、仕方ない事だ。離れるのは悲しかったが、笑顔で別れて、また会おうと約束した。
アツヤに会えなかったのは残念だった
どうやら母さんは天涯孤独の身だったらしい。親戚が居ない私はどうするか途方に暮れていた。話相手が居なくなって、途端に孤独を感じて、一人泣く日もあった。そんな時、お日さま園に引き取られる事になった。
若い女の人が迎えに来た。何を持って行けばいいのかわからず、母さんの形見の青いマニキュアと生活用品を持って、私は静岡に向かった。
もう士郎には会えないだろうと思った。
アツヤの生存理由は私と同じで、雪がスポンジになったのだそうだ。
私も士郎も、この世で一番強い物の象徴は、雪になった。
士郎は雪をそのまま愛した。最愛の弟を守ってくれた雪を、そのまま。
私は母さんを殺した雪を許せなかったがしかし、我が身を救ったのも雪である。
サッカーをするようになってから、自分が風属性と知り、強い物の象徴である雪を模そうかと思った。
しかし依然として雪は許せなかった。なので私は雪によく似た氷を愛す事にした。
「凍てつく闇の冷たさを(この世で一番恐ろしいものを)教えてあげるよ」
110403
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