季節外れで申し訳ない
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クリスマスと言えば、プレゼントがあったり、ケーキを食べたりと中々楽しいイベントだ。
私も実は楽しみにしていた。ケーキを食べられるなんて、甘党の私にとっては紛れも無く幸せ。
クリスマスには、ダイヤモンド・ダストやプロミネンスの皆で集まって、パーティを開いている。
エイリア学園は崩壊しているが、つながりを重んじる我等が崩壊くらいで絆を断ち切るわけもなく。
女性陣は美味しいケーキを作ってくれた。私達は会場の準備を行った。
瞳子さんが準備してくれた大きなクリスマスツリーの下で、パーティは滞りなく無事に終了した。
Wiiで対戦したりだとか、普段はあまりやらないことも出来てとても楽しいパーティだった。
私としては、明日まで続く馬鹿騒ぎでも良かったのだが、イベントを重んじる女子たちが、
「恋人と二人きりでも過ごしたい」と申し出たので、お開きになった。
女性陣の申し出は至極当然のことだったのだ。聖夜は恋人と過ごすものだろう。
恋人のイベントであるクリスマスは、恋愛関係にある私達にも当然当てはまるわけで。
お開きになった後、私は晴矢の部屋に居た。
何をするわけでもなく、ベッドに寝転がっているだけなのだが。
晴矢は座って携帯を操作していた。腕が私よりも筋肉質で、男としては少し泣きそうだった。
このままでは聖夜が終わってしまう。浮き足立った先程の彼女らにあてられたのか
妙にそわそわと落ち着かない。何か行動しなくてはいけないような気がする
ちょっと思案してから、晴矢の腕と体の間に自身をもぐりこませてみた。
少し高めの体温がぬくくて気持ちがいい。
ぺたっと糊で貼られた紙のように張り付き、腕を回すか、晴矢の胸元のTシャツを握り締めるか悩んで、
Tシャツを握り締めることにした。とくとくと鳴る心音が心地よい。
ゆるやかな睡魔に蝕まれながら、恋人の胸元で寝れるなんて幸せなんだろうなんて考えた。
けれど段々、正気が戻ってきたのか恥ずかしくなってきた。
凍てつく闇が温かさを求めていいのだろうか。いや、よくない。
素直に甘えてみたのだが、本来私は天邪鬼で、こんなのを体現するのは苦手なのだ。
Tシャツを握り締めていた手を開き、腕を伸ばして体から離そうとしたのだが、
ぎゅっ
腕は伸びることを許されなかった。自身の腰と背中に回った腕はいつもよりもぬくい。
そっと上を見上げると、にやにやと笑う晴矢がいた。
「携帯を弄ってたんじゃなかったのかい…?」
「風介が服掴んだ辺りから投げ捨てたけど?」
「何てことだ…。私が気付かなかっただと…。」
「はい残念でしたねー。で、何?なんかしてくれるかなーと思ったけど、離れようとするし。」
「…恥ずかしくなって。」
「なんだよー。一段と積極的だなって思ったのに。」
ぶつり、と何かが切れる音がした。多分、言葉を制御する何かだ。
「うん。ごめん。結局私は、聖夜を免罪符にでもしなければ、君に素直に甘えることも出来ない、天邪鬼なんだ。ごめんなさい。君はちゃんと素直に行動してくれるのにね。愛情を伝える言葉も私はうまく使えないんだ。好きだよ、晴矢。」
ごめんなさい、ともう一度呟くと、
涙で潤み始めた私の目をごしごしと晴矢が拭った。
「伝わってるぜ、ばぁか。」
「え」
晴矢の顔ははにかんでいた。そしてさらに強く抱きしめられた。
「風介が天邪鬼?知ってるってそんなこと。こちとら風介とながあーいお付き合いなんだぜ?知らないわけねぇよ気負いはすんなってわかってるから。風介の目を見れば、俺のこと好きかどうか、わかるから。あ、でも今の告白可愛かったぜ?」
やっぱり晴矢が私のパートナーなんだなと思いながら、私も晴矢の背中に手を回す。
あぁ、ぬくいな。
110321
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