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短い。季節外れな二人

雷門中の寮生活をしているようです。












***
注がれたおでんに笑みが零れて仕方ない。ふわふわと上がる湯気と、滲む香り。ふふーん、と鼻歌交じりに大根をつまみ上げて、じっくり眺める。今から口に広がるだろう味わいを想像してじゅるりと涎が口内を潤す。充分に眺めた大根を小皿に置く。噛り付きたいのは山々だが、火傷は御免被る。小皿に乗せた大根を箸で割ると、しっかり中まで色付いている。あぁ、美味しそう!湯気は相変わらず大根から昇るが…我慢出来ない!
ぱくんと口に放り込んで、


「んむぅー!」


熱い!熱い!予想以上に熱い!味がわからない。あぁきっと美味しいのに!


「あーぁ!お前猫舌なのに無理して」


私の向かいに座る晴矢は呆れたように水を差し出している。
私は悪く無い!悪いのは美味しそうに私を誘った大根の方だ!と叫びたいが大根が邪魔をする。差し出された水を受け取り流し込めば口内の温度は下がった。

今度こそゆっくり味わえば、ぎゅむぎゅむと噛む度に広がる旨味。予想以上の美味しさである。流石炎の料理人、晴矢作のおでんだ。味わう為に閉じていた目を開けると、破顔した晴矢と目が合った。向かいに座っているのだから当然なのだけど、少し驚く。


「お気に召しましたかー?」


発音が何とも間抜けな晴矢の問いかけに、本心を伝えるのは癪なので


「ふんっ、まぁまぁだな!」


と強がりを返すが、お前全部顔に出てるって、と晴矢はゆるゆると私を撫でる。強がった意味が無く、少々気恥ずかしくなった私はさらに大根を噛り、口内を高温にしてしまうのだった。





110318


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