学パロ
***
隣の席の女子は、泣いていた。
私の瞳は、乾いてる。
卒業したら、会えなくなる。
いくら仲の良い友達だって、学校が違えば疎遠になる。
周知の事実だ。隣の女子だってきっと、それが原因で泣いてるんだ。
私と晴矢も長い付き合いだが、きっと疎遠になってしまう。学校が違うのはやはり大きい。
担任が、涙声でサヨナラを言う。さよなら、とクラスが囁いて、3年*組は解散した。
卒業アルバムに寄せ書きする女子の群れ、無駄に集った男子の群れ。どちらもすり抜けて、廊下に出る。冷めた空気が身を包んだ。あ、冷たい。
涼野!と軽い女子が声をかけてきたが、解散したクラスメイトに一体何の用があるんだ。無視を決め込む。
反応しないと見ると女子はあっさり引き下がった。
ちらっ、と騒つく教室を見ると、よく知った赤毛は喧騒に紛れていた。
今日は一緒には帰れないだろう。一緒に下校する機会は今日が最後だが、仕方ない。
彼はクラスの人気者だから。私は、クラスの何だったのか分からない。
***
「晴矢、涼野帰ってんぞ!」
「分かってる!」
クラスメイトの声に答えながら風介の元へ急ぐ。
「あ!南雲寄せ書き書いてよ!」
女子が叫ぶが、
「風介優先!」
と負けじと叫んだ。
「南雲一年間ありがとよー!」
「グモ〜高校でもサッカー頑張れ!」
「晴矢、後でメールする!」
「おう!お前らも頑張れ!じゃあな!」
クラスの男子に手を振った後、廊下を全力疾走した。クソッ、風介足速ぇ!
担任は廊下の隅で苦笑いしていた。最後まで騒がしい奴で、すみませんね!
***
校門をくぐり抜けた時に背中にどんっと衝撃が奔った。
慌てて振り向くと赤毛が見えた。
「晴矢…?」
「そーです晴矢ですー!風介が置いてった晴矢ですー!」
むくれた晴矢に謝りながら歩きだす。
「え、ごめん。晴矢クラスメイトと喋るだろうと思って。」
さらに無愛想な表情になった。
有能な表情筋だな。
「風介、質問な。」
「あ、ああ。」
「1、俺が風介よりクラスメイトを優先した事があるか?」
「…無い。」
「2、今日はどんな日?」
「…卒業式の日。」
「3、それなのに…俺を置いてく理由は?」
「…無い。」
「だよな?」
「ん、ごめん。最後の下校なのに。」
少し頭を下げて応じると、晴矢は笑った。
「別に?…風介ちょっと俺を試したんだろ?」
「いや、試したつもりは…。でも晴矢がクラスメイト置いてくるのを期待してたかも。」
「お、デレた?」
「好きに受け取って良いよ。」
「マジか!…ここで風介にお知らせです!」
「え、何?」
突飛な話題展開に動揺すると、
晴矢はにやりと笑った。あ、いたずらっ子の顔だ。
「俺と風介はこれからも同じ登下校路です!」
「!?」
何を言ってるんだ。だって君は、
「私立に行くんだろう!?公立の受験日は学校登校組だったって聞いたぞ!」
「実は裏があるんですー!」
「はぁ?」
怪訝そうな表情を隠せない私を見て、晴矢は更に笑みを深くした。
「風介と同じ公立高校からスポーツ推薦貰ったんだよ。」
「スポーツ推薦?公立では禁止だろう」
「そう。だから卒業するまで誰にも言うなって言われてたんだよ。」
「何それ、狡い!…晴矢がスポーツ推薦なら私だって貰えた…!」
「まぁ、サッカーの実力、学力どっちも同じくらいだかんな。だが残念!**高は火属性のFWを探してたんだと!」
「豪炎寺は?」
「それは学力が足りてないんだと。**高県内のトップだからな!」
「自意識過剰!だけどそうか、晴矢も…**高なのか…言ってよ、私、今日が最後かなって…思って…。泣かないようにさぁ…。」
晴矢は涙ぐむ私の肩を組み、
「言うなって言われてたし、風介驚かせたくて!」
「ぐすっ…あぁ、驚いたさ、凄く。」
「はは!だろ?また三年間よろしくな、風介!」
快晴みたいな笑顔の晴矢に、つられて笑う。
「ああ、こちらこそ、よろしく晴矢」
110315
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