「先輩、可愛いです。」


「好きです、先輩。」


「さすが先輩ですね。」


「先輩……‥










抱かせてください。」








「…‥やだ。」



いつも思ったことをそのまま言うテンゾウは、恥ずかしい台詞もスルッと言うからタチが悪い。

いきなり好きな奴に「抱かせて」何て言われたらいくら恋愛経験豊富な俺だって焦るの決まってるでしょーが。

焦ってるなんて思われたくないから取り敢えず否定の言葉を並べる俺は、テンゾウに内心振り回されっぱなしだ。



「でも僕は、今ものすごく先輩を抱きたいんです。」



熱が灯った瞳で俺を見てそう呟き、スラッと細長くそれでいて男らしい手が俺の頬に触れる。
テンゾウの体温は暖かで、俺はその温もりがもっと欲しくなってしまう前に頬からテンゾウの手を引き離し、流されて主導権を持っていかれないようにテンゾウに話し掛けた。







「全く…‥仕方ないね、テンゾ〜は。…‥俺とヤることしか頭にないの?もしかしてただヤる為に俺と付き合ってるのかな〜。」




そう言えばテンゾウも俺とヤる気がなくなるだろう。

そう思った俺が甘かった。






「俺は先輩を愛しています。先輩のちょっとした癖や行動も、俺から見たら可愛くて仕方がなくて、いつでも何処でも先輩を抱きたい衝動に駆られてしまうんです。
別にただヤる為に先輩と付き合っているのでは決してなくて、ただただ俺は、先輩が好きで…‥大好きで…‥好きすぎて、先輩を抱きたくなるんですよ。先輩…‥












抱かせてくれませんか?」









素直な君は



真っ直ぐ俺しか見ていなくて



素直な君は



それを真っ直ぐ、言葉にして俺に伝えるから



恥ずかしい台詞を繋ぐ本人より、聞いてる俺の方が顔を染める







こんなはずじゃなかった――。







鋼のような俺のプライドは、君の熱で甘く溶かされていく。





「――ったく、仕方ないね。テンゾ〜は…‥。」












(腰…‥大丈夫ですか先輩?)(うるさい、テンゾウの馬鹿。)