泣き止むまで結構な時間がたっただろう。
俺が号泣している間も謎の赤い髪の人はずっと俺と向き合うような形で抱きしめていた。


まぁ、そのおかげで泣き顔は余り見られなかったのだが、赤髪の人の着ていた服がこれでもかっていうぐらい涙や鼻水でぐちゃぐちゃになったのは言うまでもない。



「……‥すいません。いきなり号泣してしまって。もう大丈夫ですから。あの……その‥…服、洗って返します…‥」



「……‥。」





失態だ……‥。
人前、いや会って間もない人にすがって号泣するなんて…‥。

生まれてこの方、この世に生を受けた時しか人前で泣かなかったと評判のこの俺が…‥。


しかも泣き止んだのにまだ抱きしめてくるよこの人。いい加減、解放してはくれないんだろうか。そして何で無言なの?怒ってるのか?怒ってるのかこれっ!!?



てかこの人、背でけぇ…‥。俺が173ぐらいだからこの人ざっと180ぐらいあるんじゃねぇのか?


抱きしめられたままの格好で謎の赤髪の人を観察してみる。

身長はさっきも言った通り180ぐらいと結構長身、体型は程よく筋肉がついているわりにはスレンダーな体型だ。服装は恐らく何処か余所の学校の制服だろう。学ランを少し着崩したラフな格好をしている。


そして何より目をひくのは彼の真っ赤な髪だ――。

目が痛くなりそうなほどのまぶしい赤は一件染めているのかと思ったが、どうもこれは天然らしい。どこを見ても純粋な赤で、この色は人為的に作れるものではないだろう。
眼の色も髪と同じく真っ赤で、男らしくさわやかな顔立ちと良くあっていて、まぁ一言で言えば、めちゃくちゃ格好いい。



そんなことを思いながらボーっと赤髪のイケメンさんを見ているといきなり目の前が真っ暗になるのと同時に唇に何かが触れる感触。 







―――――ちゅっ









再び目の前に光が戻った時にはこちらを見ながら爽やかな笑顔でニコニコしているイケメンさん。






「……‥あの〜、すいません。今何か俺に変なことしませんでしたか?」









「キスのことですか?」





赤髪の彼が発した声はやっぱり夢うつつに聞いた声で酷く低音でいて優しい安心できる声だった。

しかし今はそんなこと思っている場合ではなく――。






「なっ…‥なななな何でッ…‥き…キキキス何か……っ‥!!?」


さもごく普通のように答えるイケメンさん。俺はと言うと驚きすぎてうまく舌が回らず、おろおろと目を泳がせながら一人テンパっていた。






「すいません、ずーっとこちらを不思議そうに見ている貴方が可愛くてつい。」














えっ?何これ?笑うとこ?






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