ザァ――…‥






水の音が聞こえる。




疲れきった体や頭で感じとった水音。



水音が近づくにつれてだんだんと体が軽くなっていくのがわかった。




喉乾いたな……‥





ふいにそう思ったがそれは異常な胸の高鳴りに掻き消された。





ドクン…‥ドクン…‥






「…‥ッはァ…‥くッ…‥やっと…‥道が開けるッ……‥」




必死の思いで獣道をぬけ、やっと視界がひらいた瞬間目についたのは鮮やかすぎる緑と美しく静かに流れる青のコントラスト。その中に異様なまでに目立つそれは






「…‥ッ…‥‥あ…‥か…‥?」












強烈なほどの赤赤(アカ)だった―。












「ただいま…‥碧。」















水音も心音も聞こえない。

時が止まったような感覚に陥った俺は目の前の非現実的な光景に息をするのを忘れた。




「‥ぁ…‥ぁあぁッ…ァあぁッ……」





鼓膜をぬけ、脳髄の奥底まで響きわたる声に



俺は何故かまるで赤子のように声をあげて泣いた。













頭に響いていた声が現実となり、俺の鼓膜に響いてくる。


何故こんなにも歓喜するのか分からない。



だけど体が……‥



血が…‥臓が…‥熱い…‥


涙だが止まらない…‥




脳は考えることを停止する…‥





それでも心臓の奥深が…‥


















赤赤に歓喜する――。











だけど……だけど俺は…‥







君を知らない――。















「ただいま…‥碧」









ふわりと笑った赤赤は



俺を強く抱きしめた。

















なぁ………‥お前はいったい…‥







俺の何なんだよ……‥。












「ただいま…‥やっと……‥




やっと君に逢えた……‥







もう、離さない…‥

















俺の……‥俺の碧(アオ)――。」










生まれて初めて




心が満たされていく。





















ねぇ……‥早く…‥



早く物語を終わらせて…‥?





でないと君たちは……‥





















消えてしまうのだから――。









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