1
「俺の家に来てくれませんか?貴方に…‥話したいことがあるんです。」
そう誘われて俺は素直に頷いた。
俺だってアンタに聞きたいことが沢山あるんだ。
名前や碧と言う人物のこと、そして俺とアンタとの関係。
山を降りる時、俺達は一度も話さなかった。
重い空気こそ流れてはいなかったが、何とも言えない緊迫した空気がそこには流れていた。
それを無視するかのように無邪気に唄う小鳥達を少し邪険に感じた。俺を気遣い歩きやすいようにと突き出している植物や枝を折って俺より先に進んで行く赤髮さんをボーっと眺めながら俺は歩いていく。
ザァ―――…‥
水の音がだんだんと遠くなって行く。
先ほど、自分達がいた所に池があったがどうもそこから流れている水の音ではないらしい。
俺の推測だけど、多分この山のこのへんに昔、川があって災害か何かで川が土砂などで埋もれてしまったんだろう。
その証拠にここいら一体の岩などの隙間から微量だが水が流れているし空気もどこか湿っぽい。さっきの池は多分、昔の川の水がたまった場所なのだろう。
水の音はその池があった場所よりまだ上の方から聞こえていた。
水の音が完全に聞こえなくなった時には、獣道から体育の授業で走った整備された道に戻ってきていた。
だが戻ってきたとは言えまだここは山の中。
俺はひとまず小さく深呼吸をすると俺の前を歩いている赤髮さんに話し掛けた。
「家、何処にあるんですか?」
「もうすこしだよ。ここから徒歩で8分かそのぐらいかな。」
徒歩8分?
「えっ…‥でもまだ下に降りるまでどう考えても歩いて20分かそれ以上かかりますよ…‥?」
俺が体育のマラソンでこの山を登った時は、獣道にさしかかる手前の折り返し地点で折り返して学校に戻ると言うルートだったが、走っても8分で山の下まではおりられなかったはずだ。
「俺の家はこの山の中にあるんですよ。この山の土地は元々、俺の家の土地ですからね。」
何…‥だと…?
てっきりこの山は町の所有地とばかり思っていたがまさか赤髮さんがこの山の所有者だったなんてっ…‥!!?
と言うことはもしかしたら、て言うか絶対この人金持ちだっ!!!!
この山結構でかいのにその土地全部が赤髮さんのものだなんてある意味恐いよ。
「…‥でもこの山に家何かありましたっけ?」
- 8 -
[*前] | [次#]