放課後に、珍しく図書室で作詞の本とメロディが出来てある楽譜を見ながら「うーん、」と頭を抱えていれば「何唸ってるんだよ、」と後ろから最近よく聞く声がした。

「いい歌詞が浮かばなくて」

そう言って振り返れば思った通り来栖くんがいた。普段ならそのまま会話が始まるのだけれど、今回ばかりはそれはなくて。あたしの視線は来栖くんの隣にいるオレンジっぽい髪色で、ボブくらいの髪型をした女の子に注がれていた。

「………来栖くんの彼女?」

さらりと尋ねてみればふたりは真っ赤になりながらも「違う!」とか「ち、違います!」なんてぶんぶんと首を横に振りながら叫ぶように否定する。おおーい、ここ図書室なんだけどなあ…。ジロリと睨む司書の人にペコリと謝ってから「司書の人睨んでるよ」と言えばふたりははっと口をつぐんだ。

「…で、ふたりはどうしてここに?あ、もしかしてパートナー同士?席なかったんだったらここ貸すよ?」

とペンケースにシャーペンを片付けて軽く荷物をまとめて立ち上がれば「それも違う、こいつちゃんとパートナーいるし」と来栖くんに言われた。

「そうなの?え、じゃあ、やっぱ逢いび「だから違うって言ってんだろ!」
「し、翔くん!」
「なんだよ…って、あ、」

女の子の声に振り返った来栖くんは女の子の隣にいた司書の人に来栖くんは口元をひきつらせた。



「…来栖くんのせいであたしまで追い出されたじゃん」
「…ぐっ、」
「しかも春歌ちゃんまで巻き沿いにしてるし」
「………う、」
「あっ、いえ、私は別にこの本を返しに来ただけなので…」

わたしの隣でバタバタと手を振る春歌ちゃん。ついさっき自己紹介をしたのだけれど彼女はあたしのクラスのひとつ上、Aクラスの作曲家コースにいるそうだ。

「そういえば来栖くんはなんで図書室にいたの?」

春歌ちゃんは本を返しに来たみたいだけれど来栖くんは本を返すために来たわけではなさそうだし借りに来た様子もない。だから不思議に思って聞いてみれば「逃げるため」なんて返事が返ってきた。

「逃げるため?誰から?あ、わかった!日向先生からでしょ!」
「なんで俺が日向先生から逃げなきゃなんねーんだよっ!」
「だって担任じゃん」

そう言ったら「それは絶対にない!」と断言するもんだから「ええー、わかんないじゃん!」と答えればくすくすと可愛らしい笑い声があたしの隣から聞こえてくる。

「は、春歌ちゃん…?」
「はい?」
「どーして笑うのー?笑う要素はどこにもなかったはずだけど…」
「あっ、すみません!翔くんと真綾ちゃんのやりとりが面白くてつい。とっても仲がいいんですね。なんだか兄弟みたいです」

そう言われてあたしと来栖くんは顔を見合わせる。そんなこと、初めて言われた。

「あたしと来栖くんが兄弟だって」
「お前俺より身長低いもんな」
「今は身長の話じゃないでしょ!」
「だって兄弟みたいだって言われただろ?どう考えても俺が兄貴でお前が妹じゃん」
「ええー、やだ。あたしお兄ちゃん2人もいるもん、お断りだよ」

疲れたようにそう答えれば「真綾ちゃんにはお兄さんがいるんですか?」と春歌ちゃんの声。その声に「いるよ、」と頷けば「どんな方なんですか?」と聞かれたからあたしは「うるさい人たちだよ」そう言って笑えば春歌ちゃんは「賑やかそうですね」と笑った。

シフォンピンクはくすくす笑う


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