「フフーンフフフーフフフー」
昨日の放課後に放送で流れてた教祖さまの曲を口ずさみながら歩いていれば「…っ、くっそー」木の高い場所にある枝にぶら下がっている来栖くんの姿
「…………来栖くん?」
何してるのかと近寄って声をかけてみれば「うわあ!」大きな声を出して木から落ちた。…落ちたあ!?
「……く、来栖くん!?大丈夫!?」
慌てて近寄れば「いってー」頭をさすっている来栖くん。近くに転がっていた帽子を拾って近付けば「驚かすなよなー」と睨まれた。立っているあたしよりも低い位置でしかも若干涙目になっているので怖くなくてむしろ可愛い。だがそれは思っても口には出来ない。だって後でなにされるかわかんないし。
「ごめん、ごめん。それより大丈夫?結構な高さだったけど…」
「ん?ああ、平気、平気」
パンパンと服についた葉っぱとかを払ってあたしから帽子を受け取ろうとした来栖くんの右腕に線を書いたような赤い傷ができてて、あたしは「怪我してるじゃん」と指差せば来栖くんから「あ、」と小さな声が零れた。
「枝にでも引っ掻けたかな…」
「痛い?」
「いや全然」
「あっ、あたしバンソーコー持ってるよ!」
制服のポケットをゴソゴソと探していれば「別にこれくらいなんともないって」なんて言うから「これくらいの怪我でも化膿したら大変でしょ!」と少し強めに言ってバンソーコーを手渡した。
「キャラクターものでごめんね。今それしか持ってなかった」
そう言ってへらりと笑えば「…ありがとな」と聞こえてあたしは「どーいたしまして!」さらに笑みを深くしたのだった。
ひこうかいとする「そういえば木に登って何してたの?」
「………まあ、いろいろと」
「えー、いろいろってなに!?あ!もしかして秘密の特訓とか!」
「なっ!ば、ばばばか!違う!」