月に一度の抜き打ち実力テストは毎回違うお題が出されて、それに合った曲を作り、3週間後にレコーディングして評価をしてもらい順位を付ける、というテストの内容である。
今回の7月まではランダムに決められたペアで、来月からは卒業オーディションに向けて組んだペアでテストに望む。だから、今回がペアを選定するのに大事なラストチャンスなのだ。
そして、今回のお題は“ 恋愛ソング ”
なんでも学園長曰く「ラブソングは最も人の心を表すからデース!」だそうで。恋愛禁止が規則にあるこの学校で、恋愛ソングを作るなんてちょっとおかしいんじゃないのか、ってうっかり笑ってしまった。

「…と言う訳で来栖くん」
「どういう訳だよ」
「やだなあ、察してよ」
「俺は超能力者でもなんでもねー!わかるか!」
「そんな力強く否定しなくてもわかってるよー、来栖くんが超能力者だったらあたしそんけーするし」
「今だって尊敬してもいいんだぜ?」
「うーん、それはいいや」

そう言ってパックのミルクティーを飲めば来栖くんは「つまんねーの」とさおとメイトで買ったサンドイッチにかぶりついた。

「来栖くん、恋愛ソングとか歌う?」
「あんまり」
「どんなの歌う?」
「どんなのって言われてもな…」

うーん、と考えはじめる来栖くんを見ながらあたしは持ってきたファイルをガサガサと漁る。

「一応ね、メロディラインだけだけど考えてみたんだよね」
「まじ?」
「うん」

これ、と五線譜の紙を一枚差し出すと来栖くんは小さく鼻唄を歌う。あ、半音あげた方がいいところあるや。ポケットからメモ帳を取り出して忘れないうちにメモをとる。

「どう?」
「いいと思うけど俺的にはもうちょいテンポ早い方がいいと思う。あと、ここは半音あげた方が歌いやすい」
「ほうほう、ここは、どう?」
「こっちはこのままでも歌える」
「そっか、了解」

メモをとりおわってポケットにしまい込み、楽譜もファイルに片付ければ「やっぱ小鳥遊の曲歌ったら楽しそうだ」と来栖くんは歯を見せてニッと笑う。

「あたしも楽しみだよ、来栖くんがあたしの作った曲をどういう風に歌ってくれるのか」
「小鳥遊がビックリするくらいスゲー歌詞書いてやるからな!」
「はーい」
「だからお前も曲作り頑張れよな!」
「まかせといてよ!」

そう元気よく答えれば来栖くんは「目指すは1位!」なんて言って笑うから、あたしも「うん!」と元気よく返事をした。

ユニコーンの箱庭にて

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