小さい頃から夢見ていた純白のドレスを自分が着ているだなんて未だに信じられない。

「…似合う、かな」

目の前で、タキシードに身を包んだ元希に聞けば少し間を開けて「…馬子にも衣装ってやつか」と返ってきた。「それ褒めてんの?」と笑えば「褒めてんの。他に見せるのもったいねーな、このまんまどっか行くか?」なんて言うからあたしは小さく「ばか」と呟く。

「バカとはなんだ、バカとは」
「元希がばかだからでしょ。いま言っていい冗談じゃないよ、それ」
「リラックスさせようと思ったんだっつの」
「リラックスどころか呆れちゃったよ」

はあ、と小さくため息をつけば「でも、他に見せるのもったいねーのはマジだぜ」なんて言われてあたしは顔が熱くなる。

「千紗、顔真っ赤だな」
「う、うるさい、ばか、もう行っちゃえ!」

そう言えば元希は壁の時計を見て「あ、確かに行かないとやべぇわ」と言って部屋から出て行った。…と思ったら、元希は扉のところからひょっこりと顔を覗かせる。あたしはぱちりと目を見開いてからどうしたのか、と尋ねる。

「?どうしたの?」
「お前に言い忘れた」
「へ?」
「今日のお前、一番綺麗だぜ」
「!」

驚いて何も言わないあたしに元希はにんまりと満足そうな笑顔で「じゃ、式場で待ってるぜ」と言って今度こそ本当に部屋から出ていった。



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「汝榛名元希は、この女高橋千紗を妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「誓います」

「汝高橋千紗は、この男榛名元希を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

神父さんの言葉に元希をちらりと見てから「誓います」と答えれば神父さんはゆるりと笑って「では誓いのキスを」と告げる。あたしと元希は向かい合わせになる。式場でもある教会はしん、と静まり返っていて、どきどき、自分の心臓しか聞こえない。ゆっくりとヴェールに手をかける元希に笑いかけてからあたしはそっと目を閉じた。






20111030 end
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テーマ「人外ファンタジー」
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