作曲用のノートが切れかかっていたのを思い出して財布と携帯を片手にさおとメイトまで向かえば青果コーナーに美味しそうな真っ赤のリンゴが置いてあった。これ林檎ちゃんが食べたら共食いになるのかなあ、なんて変なことを考えてちいさく笑ってから作曲用のノートとリンゴを数個持ってレジに並んだ。

リンゴ、どうやって食べようかなあ、そんな事を考えながら







買ってきたばかりのリンゴを切り分けたお皿を持って脇には作りかけの楽譜を携えてコンコン、とリズムよく焦げ茶のドアをノックすれば「はーい」柔らかくてあたたかい彼女の声がした。

「香穂です。春歌ちゃん、開けてもらえるかな?」

ドア越しにそう言えば「はい、今あけま…きゃあ!」なんて声とバターン!というおおきな何かが倒れる音がした。

ああ、また転んだな。そんなことを思いながら小さく息を吐けば「す、すみません…」なんて声と一緒にドアが開く。

「春歌ちゃん、大丈夫?怪我しなかった?」

結構おおきく転んだ彼女にそう確認すれば「大丈夫です!」なんて力強い返事が返ってきた。だからあたしは「それならいいんだけど」とあたしよりも少し下にある頭を撫でれば彼女は恥ずかしそうに笑った。

可愛いなあ、なっちゃんが抱きつきたくなるのもわかるわあ、と頭を撫でながら考えていたら「あの、」春歌ちゃんから声がかかる。

「なあに?」
「えっとですね、香穂さんはどうしてこの部屋にいらっしゃったんでしょうか」
「ん?ああ、すっかり忘れてた!春歌ちゃんリンゴ、すき?」
「…え?」
「さっきさおとメイト行ったら美味しそうなリンゴがあってね、食べたくなっちゃったから買ったんだけどひとりで食べるには多くてさ、春歌ちゃんと食べようと思ったんだ」

お皿を少し持ち上げて聞いてみれば春歌ちゃんは「リンゴは好きです!」そう返ってきたからあたしは笑って「後ね、部屋でひとり作曲するのも寂しいから一緒にやっていいかな?」と聞いてみれば「はい、一緒にやりましょう!」と言ってくれてあたしは「かわいい!」と叫びながらおもいっきり抱きついた。
しばらくして満足したあたしは春歌ちゃんにリンゴが乗ったお皿を手渡せば「わあ、うさぎのりんご!」嬉しそうに声を上げたのだった。


うさぎのりんご


◎春歌ちゃんかわいい
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -