「うーん、」

どうしたものかなあ、とちいさく唸りながら食堂で親子丼をつつく。

「ちょっと春乃、あんた煩いわよ」
「えっ」
「ご飯食べてるときくらい悩むのやめなさいよね、どうしたの」

そういって煮魚を食べる友人

「ねえ、ゆんちゃん」
「ん?何?」
「ゆんちゃんは彼氏にご飯、何つくってるの?」

そう聞いたら、彼女は吃驚したのかむせた。

「えっ、ちょっ、ゆんちゃん!?」
「ごほっ、げほっ、」
「お、お水!」

慌ててお水を渡せば彼女はそれを一気に流し込む。

「し、しぬかと思った…」
「こっちも吃驚だよ…」
「いきなり春乃が彼氏にご飯何作るの、なんて質問されると思わなかったのよ…」
「う、ごめん」
「で、何、彼氏できたの?」

興味津々と言った表情で身を乗り出してきた彼女に今ちょっと親戚のお兄さんが泊まりに来ているのだと説明をした。

「なんだ、彼氏じゃないの」
「うん」
「それで料理、何作ればいいか悩んでたの」
「うん」
「その親戚のお兄さん、どれくらい滞在するの」
「…い、1ヶ月くらい?」

そう答えて首を傾げていると彼女は「何で疑問系なのよ」と呆れ気味に呟いてからお味噌汁をすすった。

「あたしにとっては大事なんだよ…不味い料理出せないもん」
「春乃は料理上手だし大丈夫じゃない?」
「でも、あの人の方が料理上手なんだよ…」
「……あらま」
「どうしようゆんちゃん〜」

そう言って目の前にいる彼女を見れば「料理は愛があればラブイズオーケーよ」なんて、少し前までやっていたテレビ番組の真似をして笑うから、あたしはとりあえずまた夜ご飯の献立に頭を悩ませることにした。だってあたしと幸村さんの間には愛なんてまったくのこれっぽっちも存在していないのだから。





「うーん、」

うんうんと悩みながらも最寄りのスーパーでお買い物をする。お魚、お肉、お野菜、いろいろ食材を見回りながら軽くスーパーを2周してしまった。持ってるかごには牛乳とホットケーキミックスしか入ってない。しばらく立ち止まって考えてから、お肉のコーナーで鶏の挽き肉を、卵のコーナーでパックの卵、調味料コーナーでケチャップをカゴに入れてレジへ進む。お野菜は家に一杯あるし問題ない。さっさとお会計を済ませてエコバッグに買ったものを詰め込んで、スーパーから出れば「春乃ちゃん」名前を呼ばれた。振り向いてみればそこには幸村さんの姿。

「あれ、幸村さん?どうして…」
「荷物持ち、必要かなって思って」
「えっ」
「それ、貸して」

そう言ってあたしが返事をしないうちにあたしの手からエコバックをかっさらっていく幸村さんに、あたしはなんで、とかどうして、とかいろいろ聞きたいことがあったのに何も聞けなくて、口をパクパクさせていたら笑われた(金魚みたい、だって!)。
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