目覚ましがけたたましく鳴るのをもぞもぞとベッドから抜け出してパチリととめれば美味しそうな匂いが鼻をつく。

あれ、お母さんでも来てたっけ?なんてぼんやりと考えながらうっすらと目を開ける。あれ、お母さん?いや、違う、そうだ、昨日から幸村さんいるんだった。ん?幸村さん?

「あ!」

がばりと布団を翻してバタバタと寝癖なんか気にしないで寝間着のままキッチンに行けば

「あ、おはよう」

コーヒーカップを片手に新聞を読む幸村さん。朝日がちょうどよく窓から射し込んでいてきらきらと幸村さんの回りに散らばってるみたいで、持っているはずのコーヒーカップは安っぽいはずなのになんだか高級なものに見えてそこだけが別次元に見える。

「春乃ちゃん?」
「え…あ、おはようございます!」

慌てて挨拶を返せば幸村さんは「朝ごはんできてるけど食べる?着替えてからにする?」そう聞かれて「着替えてからにします!」と答えたら幸村さんは笑って頷いた。





「ごちそうさまでした!」

カチャリとフォークをお皿に置いて、両手を合わせてそう呟く。朝からこんなにしっかりした朝食を食べるのは久々だ。

「美味しかったです」
「それは良かった」
「幸村さん、自炊でもしてたんですか?」
「まあ、それなりにしてたかな。一人暮しも長いしね」
「へー」
「ところで春乃ちゃん」
「はい?」
「大学、間に合う?」

そう言われて差し出されたアナログ時計を確認してみればもう家を出なきゃいけない時間で。あたしは慌てて食器をシンクに置いて、バタバタと鞄を取りに戻って玄関に行く。

「幸村さん!今日はあたしが夕飯作りますんで!」
「うん、楽しみにしてるね」
「じゃ、行ってきます!」
「あ、待って」
「?はい?」

玄関を出ようとして振り返ったら幸村さんの手がすっと伸びてきて「寝癖を付いてるよ」とあたしの前髪を触った。

「!」
「うん、これで大丈夫。いってらっしゃい」
「い、いってきます!」

真っ赤な顔を見られないようにあたしは慌てて玄関を出た。学校に行くまでになんとか顔の熱は収まりますように、と願いながら。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -