大学に遅れそうだからとバタバタ騒がしく出てきちゃったけどあのお兄さんは大丈夫だろうか。そんなことをぼんやりと考えながら受けた講義はまったくと言っていいほど頭に入らなかった。…これの試験勉強ちょっと真面目にやろう。お昼は食堂で友人たちと一緒にご飯を食べ、いつも通りに過ごす。だけどいつもとちょっと違うのは帰りに寄り道をしないでまっすぐお家に帰ること。

ガチャリ、とドアノブを回して家のなかにはいるとふんわり美味しそうな匂いがあたしの鼻をかすめる。いい匂い、そう呟こうとしたらひょっこりとドアの向こうからお兄さんが顔を出した。

「おかえり」
「あっ、ただいまです」
「ごめんね、勝手にキッチン借りちゃった」

夕飯、作らせてもらったよ と笑うお兄さんにあたしはぽかん、と呆ける。

「どうしたの?」
「え、あ、はい。荷物おいてきます!」
「うん、お皿によそっとくよ」

パタパタと部屋にいって鞄をおいてリビングに戻ればテーブルの上に美味しそうな煮物と卵焼き、それにきんぴらごぼうと真っ白いご飯にお味噌汁が準備してあった。

「…うわあ、」

すごい食事、そう呟けばお兄さんは笑った。

「時間はたくさんあったからね」
「なにか収穫、あったんですか?」
「うん。とりあえずご飯にしよう。話は食べながらでいいかな?」
「あ、はい」

座布団の上に座り、いただきます、と手を合わせてご飯を食べ始める。

「とりあえず自己紹介からしようか。俺は、幸村精市」
「藍沢春乃です」
「えっ、」
「え?」
「あ、いや、ごめんね、知り合いの名前と一緒だったから」
「そうなんですか?」
「こんな偶然あるんですねー」
「そうだね」
「えと、大学2年生です」
「俺は25歳で職業は秘密かな」
「秘密?」
「うん秘密。それとね、」
「はい?」
「ここは俺のいた時代からちょうど6年前みたい」
「25歳で6年前ってことは…この時代の幸村さんって同い年なんですか!?」
「そうだね」
「わ、」
「信じられない?」
「ちょっとだけ」

それからもお互い質問と受け答えをして、決まったことはこれからしばらく幸村さんがしばらくあたしの家でお世話になったこと。
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