血の気が引く、というのはまさにこういうことなんだろうと初めてきちんと理解しているあたしの頭のなかはどうしよう、そんな言葉で埋まっていた。

やばい、まじ、やばい

ペンケースを漁ってみても、鞄のなかを漁ってみても目的のものは見つからなくて。うわあ、まじこれやばいじゃん、間違えたら死活問題じゃないかーい!すでに頭のなかはパニック、思考回路はショート寸前、視界が滲んできたぞ、どうしよう。

もう一度ペンケースを開こうとしたら「何か忘れたのか?」そう隣から声を掛けられた。

「え、」

くるりと隣に目線を向ければぱっちりおめめをした男の子。随分と可愛いお顔をしてらっしゃる。いきなり話しかけられて困っていれば可愛い男の子は「何か忘れたのか?」とまた聞いてきた。

「………消しゴム、なくて」

小さく周りに聞き取れるか取れないくらいの声量で呟けば男の子は「あー、そりゃ真っ青になるよな」と小さく苦笑いをこぼしてから自身の手元にある消しゴムを何の躊躇いもなく真っ二つにした。

「ん、」
「…へ?」
「これやるよ」
「え、でも、」
「いいからこれ使えって」

真っ二つにした消しゴムの片方をあたしの手のひらに握らせて男の子は「だから試験諦めんなよ」と笑ったからあたしも「ありがとう、頑張る」と笑い返した。


いちにのさんで魔法にかかる


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