「羊くん、美味しそうに食べるね」

一枚くらい頂戴?
食堂で、錫也が作ってくれたクッキーを目の前で嬉しそうに頬張る羊くんの姿を見てそう言えば彼はクッキーが入ってるお皿を少しだけ自分の方に引っ張って「あげないよ」と一言。もし、この台詞を月子が言ったならば羊くんは喜んであのお皿を差し出すのに、なんて奴だ。

「え、たくさんあるんだもん、一枚くらいダメなの?」

「ダメだよ。これは僕が錫也に作ってもらったんだ」

「えー」

ずるい、と唇を尖らせてふて腐れる私に羊くんは少し迷ってから「一枚だからね」と自分の方に引っ張ったお皿を少しだけ私の方に差し出す。

「ありがとう」

そういって一枚お皿からとってさくり、と一口。ふわりとバターの風味とイチゴジャムの少しの酸味が口の中に広がる。自然と緩んでいく口元に目の前の羊くんも私につられるようにふわりと笑顔になる。

「おいしいね」

そう羊くんに言えば「うん」と嬉しそうな笑顔と声色で返事が返ってくる。さっき哉太を呼んでくる、と食堂から出ていった錫也に心の中で感謝しつつ羊くんの方を見ればあんなにたくさんあったクッキーがあと数枚しか残っていなかった。

「羊くん食べるのはやい!」

いつもより少し大きくなった声でそう言えば「だって美味しいから」なんて言われて確かに、と思ってしまった。そんな時だ。ふわりと温かい春の風が窓から食堂の中へと入って来たのは。

「あ、桜」

春風に乗ってやってきたであろうひらひらと舞う桜の花びらをつかまえてから私は「そうだ!」と勢いよく椅子から立ち上がる。向かい側に座っていた羊くんはクッキーを食べるのをやめて少し驚いた表情で私を見ていた。

「どうかした?」

そう聞かれて私は「お花見、しよう!」と笑顔で答える。

「お花見?」

「うん!残ってるクッキー持って、外にある販売機で飲み物買って、裏庭にある桜の木のところでお花見!どう?」

そう聞けば羊くんは「楽しいの?」なんて言いながらも椅子から立ち上がるから私は「たぶん楽しいよ!」と答えて羊くんの手をとった。



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